Episode 15 : high speed



 夜。
「あー」
 ベッドに倒れ込みながらレオナルドはぼんやりと声を出した。なんだかいろいろ吹っかけられてどうでもよくなるような、そんな感覚が体を支配していた。
 電気がつけられていない中でそのまま茫洋とした意識の中でまどろんでいると突然横から声をかけられた。
「大変だな」
「うわあ!」
 おもわず声をあげて驚く。間もなく電気がつけられ、そちらをみるとそこには煙草を銜えたドクが立っていた。火はついていない。
「ああああああんたなにやってんだそんなところで!」
「いやあ、レオナルド君が無理難題を吹っかけられたようなのでね。心配で」
「ホント? うれしいな」
「嘘だ」
 その言葉に脱力しながら言い返す。
「あんた最低だ」
「よくいわれる。それにしても明日は難しいぞ。機体はともかく、お前さんの準備ができてないだろう。間違いなく」
 険しい目でこちらをみてくるとドクは煙草をシガレットケースに放り込み、部屋の窓を閉めた。なんで銜えていたのだろうか。レオナルドが喫煙者だと知らないからだろうか、それはよくわからない。
 ドクは普段は研究室にこもっているため、あまり顔をみせることはない。レオナルドが呼ばれるのもエミリーで、連れて行かれた先にドクがいるといった具合だ。普段本人がこうしてこちらに出向くのは珍しいと言っていい。
 彼はこちらを鋭い目で見据えてくると、
「機体はいつでも大丈夫だ。ただ僚機がクエンフィールドだからな。どれだけついていけるかかな」
「どれだけ?」
「最高速度が足りない。機種が違うんだ。お前の機体は小さい分小回りが効くがスピードに劣る。クエンフィールドの乗る機体は最新型でスピードがでる」
「はあ......」
「まあ、エバンテの戦闘はさけられないだろうしな。そこはがんばれ。で、行けそうなのか?」
「いや......微妙」
 その対応はドクの表情をわずかに動かした。彼は笑みを浮かべてみせてきたが、それは無理矢理ではなく、当然だろう、という笑みだ。
 部屋にしばらく間ができた。風船を詰め込んだような空気の張りが感じられた。
 レオナルドの居心地が悪くなり始めた頃、ドクが突然口を開いてきた。
「そこで提案なんだがね」
 ぴっと指を立ててドクが続けてくる。
「アビーの機体に乗ってみないか?」
「アビー?」
「アビー・アンダーソン。戦闘機に乗っての出撃だったみたいだが、ヤツじゃ本当は爆撃専門の人間なんだ。何故かは知らないが俺があいつを回収したとき、戦闘機だった。それも、最新型だった」
 レオナルド自身はアビーと直接の面識はない。シーナの婚約者だった、程度だ。彼が、戦闘機でここを経由しなければならない理由があったのだろうか。
「機密を漏らすとクビが飛ぶんだがね」
 ドクはそう前置きすると入り口に向かって歩き出した。
「来な。教えてやるよ」

 
 墓地が近いとあって夜の庭園は微妙な不気味さがあった。レオナルドはそこをドクの隣をついていった。
 歩きながらドクは自らのことを明かし始めた。
「俺とエミリーは空軍から派遣されたメカニックなんだ。登録もされてる。ここに入ってきたパイロットを回収して機密を守るのが役目だ」
「回収?」
「普通外には出さないんだけどな。そんなわけで俺たちのことは次長しかしらない。他の大佐連中はフリーだと思っている」
「だからエバンテも修理してたのか」
 目を細めながらレオナルドが問いかけるとドクは頭を振ってきた。
「あれはフリーランスワーク。入るぞ」
 三つある工房のうち、真ん中の「2」という数字が書かれた建物に近づくと、工房の入り口にあるレーダー鍵に手をおいた。認証が通され、扉が開く。
「アビーは撃墜されたときとある極秘任務を預かってた。科学研究所の連中が開発した兵器を運ぶ仕事だったらしい。ちょうどそのとき俺の所にきてたパイロットがその任務を引き継いでいった。その直後にアビーは死んだ」
 淡々と話しながらドクは中に入っていった。
「墓は見たか?」
「うん」
 返しながらレオナルドはポケットに手を入れた。そこにあるのは土にまみれたアビーのドッグタグ。こちらの様子をみてにやっと笑うと、
「それ、アビーの親にでも返してやりな。この場合は上司かな」
 そうはならないだろうな、とレオナルドは思った。手に触れた瞬間返すべき相手が思い浮かんだ。
 スイッチを入れる音がしてその工房の明かりがつく。あちこちに工具や燃料がおいてあり、その真ん中に一機の戦闘機があった。
「これ......」
「ストロークF09。最新型だ。公式に使用もされていない。多分そろそろ始まる頃じゃないかとは思うがね。でも実際の設計とはちと違う。中身は完全に取っ払って俺が特別仕様に変えてある。完全空中戦闘仕様さ。特殊ブレイ空対空ミサイルにリボルバーカノンの機銃を備えてる。レーダーと火器管制装置もチューンナップした」
「つまり?」
「腕で勝てないならマシンで勝て、てことだ」
 ドクは煙草を取り出すとそれを銜えて火をつけた。煙を吐き出しながらにやりと笑ってみせてくる。
 地上にあるどの機体よりも速く、高く飛べる。そういうことだろう。詳しいことはよくわからないがどうやらドクはアビーの機体を完全に改造してしまったらしい。
「それはいいの?」
「この機体は公式にはもう存在しないことになっている。あとはお前の体がなじめば一番いいんだがね。乗ってみるか?」
「今?」
「そう、今」
 そういって彼はこちらに一つのキーホルダーにつながれた鍵を投げてよこした、それをつかむとレオナルドはその黒い機体を見上げた。
 乗るしかないか。
 機体の翼をつかんでキャノピィを開くと、どうやら複座の機体のようだった。前の席に座ってあたりを確認する。
 その時自分を襲った感覚にレオナルドは驚いた。
 まるで自分がかつていた場所に戻ってきたような、そんな感覚。
 驚くほどしっくりきたそれに戸惑う。
「どうだ?」
「いけそう。これなら」
「アビーとお話してみろよ」
 煙草を吹かしながらそんなことをドクは言ってきた。霊魂を信じる性質ではないので、さすがに笑って流したが。
 機体から降りるとレオナルドは素直に気持ちを口にした。
「やばいくらいしっくりくるよ。なんなんだろう。あれ」
「さあ......」
 そういうとドクは煙を吐き出しながら肩をすくめて見せた。そしてこちらにきびすを返すと工房の出口二向かって歩いていく。
「俺は寝る。明日だろ?」
「うん」
「お前も寝れば?」
「しばらくここにいるよ」
「ああ、そうか。明日に響かないようにな」
 妙に優しいその台詞にひっかかるものを感じながらレオナルドは彼の背中を見送った。
 明日はいよいよ本番なのだ、ということだろう。正直不安もある。だが、この機体に乗った瞬間、なにかに背中を押されたように、今まで自分を支配していた暗い気分が霧のように晴れていく。
 雲海を飛び出したときのような感覚。

「ははっ、なんだこれ」

 思わずつぶやく。その瞬間レオナルドは腹を抱えて笑った。
 どうしようもない感情が這い上がってくる気がして。

 ++++

 夜、フランクフィールド基地。
 そろそろ日付も変わろうかというころ、サーシャのオフィスの電話が鳴った。
「フランクフィールド。オペレーター?」
 そういった後しばらく相手の言葉を聞くとため息をつく。
「そう、ええ。わかりました。こちらにはいつ?」
 手元のメモ用紙にペンを走らせながら唇をかむ。ペンを置くと窓の方に視線を移した。
「明日の何時に?」

 午前五時。
 ドアがノックされる。
「大佐、入りますよ?」
「どうぞ」
 扉が開いてやってきたのはスコットとジャックだった。二人を迎えると、サーシャは机の前にある椅子に座るように促す。
「スコット今日早番よね」
「緊急事態ですか?」
「ええ」
 それだけを返すとキーボードをたたく。
「レーダー員がストックランド・ローズ区から敵戦闘機の集団が向かっているのを確認したわ」
「こちらに?」
「ええ。ルートからたどると間違いなくここの爆撃を狙ってる。それを阻止して」
「了解です。敵は何機です?」
 そこで一瞬サーシャは間を置いた。
「およそ100」
「ずいぶんな数ですね。青空も真っ黒になりますね」
 自虐的にジャックが笑った。それに対してサーシャは頭をふると、
「近辺の基地に援助を求めてるけど反応がよくないの。今ここの戦力でしばらく持ちこたえるしかないわ」
「今居るパイロットは十五人ですよ? 新人もいますし爆撃機軍団にドックファイトは厳しいんじゃないかと......」
 ジャックがそういうとスコットがその肩をたたいた。
「戦う前から弱気になってどうする」
「そういうこと。状況が状況だから仕方ないものね」
 エンターキーを押すとサーシャの脇のプリンタから書類がでてきた。
「次長に許可はもらったわ。これがその証明になる。君たち二人はリーダーとして自分のチームに伝えて。スコットは戦闘機のみんなを、シュート君は爆撃機軍団のみんなを攻撃機で出撃させて。ルートを調べたら連絡するから、燃料の残量次第では敵の本拠地を叩くかもしれない」
「了解です」
 二人は敬礼した。部屋を出ようとしたスコットの背中にジャックのやや弱気な声がかかる。
「シーナが入ればすこし違うのかな」
「どうだかね。一人十機撃墜すれば元がとれる」
 あっさりとそういう彼にサーシャは伝えようとしたが、なにも言えなかった。
「......」
 いずれ彼らも知ることになるだろう。だがそれは生きて帰ってきてからだ。
 
 

 
 
 夜。
「あー」
 ベッドに倒れ込みながらレオナルドはぼんやりと声を出した。なんだかいろいろ吹っかけられてどうでもよくなるような、そんな感覚が体を支配していた。
 電気がつけられていない中でそのまま茫洋とした意識の中でまどろんでいると突然横から声をかけられた。
「大変だな」
「うわあ!」
 おもわず声をあげて驚く。間もなく電気がつけられ、そちらをみるとそこには煙草を銜えたドクが立っていた。火はついていない。
「ああああああんたなにやってんだそんなところで!」
「いやあ、レオナルド君が無理難題を吹っかけられたようなのでね。心配で」
「ホント? うれしいな」
「嘘だ」
 その言葉に脱力しながら言い返す。
「あんた最低だ」
「よくいわれる。それにしても明日は難しいぞ。機体はともかく、お前さんの準備ができてないだろう。間違いなく」
 険しい目でこちらをみてくるとドクは煙草をシガレットケースに放り込み、部屋の窓を閉めた。なんで銜えていたのだろうか。レオナルドが喫煙者だと知らないからだろうか、それはよくわからない。
 ドクは普段は研究室にこもっているため、あまり顔をみせることはない。レオナルドが呼ばれるのもエミリーで、連れて行かれた先にドクがいるといった具合だ。普段本人がこうしてこちらに出向くのは珍しいと言っていい。
 彼はこちらを鋭い目で見据えてくると、
「機体はいつでも大丈夫だ。ただ僚機がクエンフィールドだからな。どれだけついていけるかかな」
「どれだけ?」
「最高速度が足りない。機種が違うんだ。お前の機体は小さい分小回りが効くがスピードに劣る。クエンフィールドの乗る機体は最新型でスピードがでる」
「はあ......」
「まあ、エバンテの戦闘はさけられないだろうしな。そこはがんばれ。で、行けそうなのか?」
「いや......微妙」
 その対応はドクの表情をわずかに動かした。彼は笑みを浮かべてみせてきたが、それは無理矢理ではなく、当然だろう、という笑みだ。
 部屋にしばらく間ができた。風船を詰め込んだような空気の張りが感じられた。
 レオナルドの居心地が悪くなり始めた頃、ドクが突然口を開いてきた。
「そこで提案なんだがね」
 ぴっと指を立ててドクが続けてくる。
「アビーの機体に乗ってみないか?」
「アビー?」
「アビー・アンダーソン。戦闘機に乗っての出撃だったみたいだが、ヤツじゃ本当は爆撃専門の人間なんだ。何故かは知らないが俺があいつを回収したとき、戦闘機だった。それも、最新型だった」
 レオナルド自身はアビーと直接の面識はない。シーナの婚約者だった、程度だ。彼が、戦闘機でここを経由しなければならない理由があったのだろうか。
「機密を漏らすとクビが飛ぶんだがね」
 ドクはそう前置きすると入り口に向かって歩き出した。
「来な。教えてやるよ」

 
 墓地が近いとあって夜の庭園は微妙な不気味さがあった。レオナルドはそこをドクの隣をついていった。
 歩きながらドクは自らのことを明かし始めた。
「俺とエミリーは空軍から派遣されたメカニックなんだ。登録もされてる。ここに入ってきたパイロットを回収して機密を守るのが役目だ」
「回収?」
「普通外には出さないんだけどな。そんなわけで俺たちのことは次長しかしらない。他の大佐連中はフリーだと思っている」
「だからエバンテも修理してたのか」
 目を細めながらレオナルドが問いかけるとドクは頭を振ってきた。
「あれはフリーランスワーク。入るぞ」
 三つある工房のうち、真ん中の「2」という数字が書かれた建物に近づくと、工房の入り口にあるレーダー鍵に手をおいた。認証が通され、扉が開く。
「アビーは撃墜されたときとある極秘任務を預かってた。科学研究所の連中が開発した兵器を運ぶ仕事だったらしい。ちょうどそのとき俺の所にきてたパイロットがその任務を引き継いでいった。その直後にアビーは死んだ」
 淡々と話しながらドクは中に入っていった。
「墓は見たか?」
「うん」
 返しながらレオナルドはポケットに手を入れた。そこにあるのは土にまみれたアビーのドッグタグ。こちらの様子をみてにやっと笑うと、
「それ、アビーの親にでも返してやりな。この場合は上司かな」
 そうはならないだろうな、とレオナルドは思った。手に触れた瞬間返すべき相手が思い浮かんだ。
 スイッチを入れる音がしてその工房の明かりがつく。あちこちに工具や燃料がおいてあり、その真ん中に一機の戦闘機があった。
「これ......」
「ストロークF09。最新型だ。公式に使用もされていない。多分そろそろ始まる頃じゃないかとは思うがね。でも実際の設計とはちと違う。中身は完全に取っ払って俺が特別仕様に変えてある。完全空中戦闘仕様さ。特殊ブレイ空対空ミサイルにリボルバーカノンの機銃を備えてる。レーダーと火器管制装置もチューンナップした」
「つまり?」
「腕で勝てないならマシンで勝て、てことだ」
 ドクは煙草を取り出すとそれを銜えて火をつけた。煙を吐き出しながらにやりと笑ってみせてくる。
 地上にあるどの機体よりも速く、高く飛べる。そういうことだろう。詳しいことはよくわからないがどうやらドクはアビーの機体を完全に改造してしまったらしい。
「それはいいの?」
「この機体は公式にはもう存在しないことになっている。あとはお前の体がなじめば一番いいんだがね。乗ってみるか?」
「今?」
「そう、今」
 そういって彼はこちらに一つのキーホルダーにつながれた鍵を投げてよこした、それをつかむとレオナルドはその黒い機体を見上げた。
 乗るしかないか。
 機体の翼をつかんでキャノピィを開くと、どうやら複座の機体のようだった。前の席に座ってあたりを確認する。
 その時自分を襲った感覚にレオナルドは驚いた。
 まるで自分がかつていた場所に戻ってきたような、そんな感覚。
 驚くほどしっくりきたそれに戸惑う。
「どうだ?」
「いけそう。これなら」
「アビーとお話してみろよ」
 煙草を吹かしながらそんなことをドクは言ってきた。霊魂を信じる性質ではないので、さすがに笑って流したが。
 機体から降りるとレオナルドは素直に気持ちを口にした。
「やばいくらいしっくりくるよ。なんなんだろう。あれ」
「さあ......」
 そういうとドクは煙を吐き出しながら肩をすくめて見せた。そしてこちらにきびすを返すと工房の出口二向かって歩いていく。
「俺は寝る。明日だろ?」
「うん」
「お前も寝れば?」
「しばらくここにいるよ」
「ああ、そうか。明日に響かないようにな」
 妙に優しいその台詞にひっかかるものを感じながらレオナルドは彼の背中を見送った。
 明日はいよいよ本番なのだ、ということだろう。正直不安もある。だが、この機体に乗った瞬間、なにかに背中を押されたように、今まで自分を支配していた暗い気分が霧のように晴れていく。
 雲海を飛び出したときのような感覚。

「ははっ、なんだこれ」

 思わずつぶやく。その瞬間レオナルドは腹を抱えて笑った。
 どうしようもない感情が這い上がってくる気がして。

 ++++

 夜、フランクフィールド基地。
 そろそろ日付も変わろうかというころ、サーシャのオフィスの電話が鳴った。
「フランクフィールド。オペレーター?」
 そういった後しばらく相手の言葉を聞くとため息をつく。
「そう、ええ。わかりました。こちらにはいつ?」
 手元のメモ用紙にペンを走らせながら唇をかむ。ペンを置くと窓の方に視線を移した。
「明日の何時に?」

 午前五時。
 ドアがノックされる。
「大佐、入りますよ?」
「どうぞ」
 扉が開いてやってきたのはスコットとジャックだった。二人を迎えると、サーシャは机の前にある椅子に座るように促す。
「スコット今日早番よね」
「緊急事態ですか?」
「ええ」
 それだけを返すとキーボードをたたく。
「レーダー員がストックランド・ローズ区から敵戦闘機の集団が向かっているのを確認したわ」
「こちらに?」
「ええ。ルートからたどると間違いなくここの爆撃を狙ってる。それを阻止して」
「了解です。敵は何機です?」
 そこで一瞬サーシャは間を置いた。
「およそ100」
「ずいぶんな数ですね。青空も真っ黒になりますね」
 自虐的にジャックが笑った。それに対してサーシャは頭をふると、
「近辺の基地に援助を求めてるけど反応がよくないの。今ここの戦力でしばらく持ちこたえるしかないわ」
「今居るパイロットは十五人ですよ? 新人もいますし爆撃機軍団にドックファイトは厳しいんじゃないかと......」
 ジャックがそういうとスコットがその肩をたたいた。
「戦う前から弱気になってどうする」
「そういうこと。状況が状況だから仕方ないものね」
 エンターキーを押すとサーシャの脇のプリンタから書類がでてきた。
「次長に許可はもらったわ。これがその証明になる。君たち二人はリーダーとして自分のチームに伝えて。スコットは戦闘機のみんなを、シュート君は爆撃機軍団のみんなを攻撃機で出撃させて。ルートを調べたら連絡するから、燃料の残量次第では敵の本拠地を叩くかもしれない」
「了解です」
 二人は敬礼した。部屋を出ようとしたスコットの背中にジャックのやや弱気な声がかかる。
「シーナが入ればすこし違うのかな」
「どうだかね。一人十機撃墜すれば元がとれる」
 あっさりとそういう彼にサーシャは伝えようとしたが、なにも言えなかった。
「......」
 いずれ彼らも知ることになるだろう。だがそれは生きて帰ってきてからだ。


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