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    <title>AZAMI</title>
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    <title>あとがき</title>
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    <published>2010-06-19T07:34:35Z</published>
    <updated>2010-06-19T07:34:56Z</updated>

    <summary>あとがき　ーー　穴馬　えー、あとがきです。最後の最後で散々ひっぱってしまいました...</summary>
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        <name>Sho Ayase</name>
        
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        <![CDATA[あとがき　ーー　穴馬<br /><br />　えー、あとがきです。最後の最後で散々ひっぱってしまいましたね。なんで二十話と二十一話の間がこんなに空いているかってひどく精神的に追い込まれていたからなんですが。<br />　<br />　完結しました。結構泣き虫なレオナルド君ですが最初はもっとルーシーの出番もあったはずなんだけどなあ......なんだかんだいって最初と最後だけのかわいそうなこです。その分SEASON2では思い切りだしてあげる予定ではあります。<br />　<br />　ご覧の通り色々伏線はりっぱなりで終わっているので、AZAMIはまだまだ続きます。<br />　本当はもっとシーナとのラブストーリィも書きたかったんですがそれもならず。<br />　個人的にはシーナが一番好きでした。<br />　<br />　そんなこんなであとがきになっているのかな？　て感じでおわります。<br />　次はセカンドシーズン、アザミが主役に戻ります。<br />　<br />　期待していてください！　それでは！<br />　<br />　BGM "Not Meant To Be" by Theort of A Dead ]]>
        
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    <title>Last Word</title>
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    <published>2010-06-19T07:25:53Z</published>
    <updated>2010-06-19T07:26:33Z</updated>

    <summary>「一人じゃないと確信したいんだ。　どこかで同じ気持ちの人がいるはずなんだ。　どこ...</summary>
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        <![CDATA[<br />「一人じゃないと確信したいんだ。<br />　どこかで同じ気持ちの人がいるはずなんだ。<br />　どこかに俺にふさわしいひとがいるはずなんだ」<br /><br />Nickelback -- Gotta Be Somebody ]]>
        
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    <title>Episode 21 : without her</title>
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    <published>2010-06-19T07:22:32Z</published>
    <updated>2010-06-19T07:25:41Z</updated>

    <summary>　大きく鐘が鳴り響く。　基地の滑走路の端で、それは執り行われた。　空軍の制服に身...</summary>
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        <![CDATA[　大きく鐘が鳴り響く。<br />　基地の滑走路の端で、それは執り行われた。<br />　空軍の制服に身を包んだフランクフィールドの軍人たちが整列する。<br />　前方の壇にたったフレミング空軍次長が賛歌の一節とともに、言葉を述べていく。<br /><br />　大きく国旗と空軍の旗が振り上げられる。<br />　賛歌とともに。<br /><br />　シーナの写真がある。<br />　それだけでレオナルドは心が締め付けられそうだった。<br />　<br />「空を飛ぶ者に、神のご加護を」<br /><br />　その言葉の後に、大きく響いた。<br /><br />「敬礼！」<br />　<br /><br />　LEONARD 021<br />　Dark Horse<br /><br /><br />　教会に運び込まれたシーナの体は花で包まれていた。このどこかに納棺される予定だというが、その前に関係者の訪問がゆるされていた。<br />　とはいえ、孤児であるシーナにだれがくる訳でもない。レオナルドは教会にただ一人、シーナの棺桶の傍に立っていた。<br />　傷は縫合され、以前の様に髪や肌も納棺師の手で元通りになっていた。目を閉じたその姿は以前とまったく変わりがない。<br />　レオナルドは彼女の姿を見ながら、小さく呟いた。<br />「助けてくれて、ありがとう」<br />　そしてアビーのドッグタグを取り出すとそれをしばらく見つめ、そして棺桶の中に落とし入れた。<br />「そっちで幸せに」<br />　それ以上は言えなかった。<br />　涙がこぼれる。<br />「幸せに」<br />　目元を抑える。<br />　声がでない。<br />　彼女の胸元に落ちたアビーのドッグタグをしばらく見つめ、それから踵を返した。<br />　教会の外にでると、そこにはスコットが立っていた。<br />「また泣いてるのか」<br />「弱虫君だからさ」<br />　そう自虐的にいうと、彼は首を振ってきた。<br />「それは違う」<br />「どうして？」<br />「お前は空でエバンテを撃った。あのとき俺を助け、そして勝った。撃墜宣言した」<br />「それは......」<br />「シーナの死は関係がない」<br />　そういうとスコットは少し笑ってみせてきた。<br />「お前は弱虫じゃないよ。レオナルド」<br />「悲しくないっていうわけかい？」<br />　尋ねると教会の道路を歩きながらスコットは頭を振って否定してきた。<br />「関係がないってのはそういうことじゃない。そりゃ仲間が死んだら悲しいさ。それは当然。だけどそれとは別に、飛んでいるときのお前は弱虫なんかじゃないぜって話」<br />「スコットも悲しいんだ？」<br />「ああ。俺もだ。人には悲しみ方ってのがある。それぞれな」<br />　付き合いが短かったから泣かない、というわけではない。<br />　きっとそれは付き合いの長さとは関係ないのだ。<br />　軍人だから気にしないでいなければならないというわけでもない。<br />　悲しんでも良いのだ。<br />　その方法を変えるだけで。<br />　サーシャも、アザミも、ジャックも、みんなそうしてきたのだろう。<br />　カテリーナが死んだときも。<br />　アビーが死んだときも。<br />　教会の正門をくぐると、スコットがこちらの肩をたたいてきた。<br />「そんじゃーな」<br />「え？」<br />　一緒に基地に戻るんじゃ、と言いかけたがスコットはこちらの後ろに顎をしゃくってきた。<br />　そちらを見ると、彼女が立っていた。<br />　カテリーナと瓜二つの、彼女。<br />　黒い服に身を包んで、髪は後ろで纏めていた。<br />「よ、ルーシー」<br />　知り合いなのか、スコットが手をあげて彼女に挨拶した。<br />「ルーシー？」<br />「あー、いっちゃだめじゃん。せっかくレオナルドには教えないでおいたのに」<br />　彼女が頬を膨らませていってくる。<br />「ルーシーっていうの？」<br />「そ」<br />「なんでここに？」<br />「妹の墓参り、かな」<br />　にっと笑って彼女は言ってきた。<br />　呆然としているとうしろからと背中を押された。スコットだ。<br />「いってらっしゃい。大佐には今日は帰らないって伝えておくよ」<br />　驚きの表情でそちらを振り返る。が、スコットはすでに歩き出していた。お礼を言いそびれたことに気づいたが、もう声をだしても仕方が無い。<br />　こちらの腕をつかんでくると、ルーシーが先立って歩き出した。<br />「いこ、レオナルド」<br />「どこに？」<br />「どこか。飲みにでもいく？」<br />　それには答えずにレオナルドは空を見上げた。雲一つない青空だった。<br />　あそこを飛んでいたのだ。<br />　いつかシーナと、二人で飛べたら。<br />　そう考えたときもあった。<br />　最後の最後で、彼女は自分を助け、自分の願いもかなえてくれたのだ。<br />　素敵な女性だった。<br />　本当に。<br />「綺麗だ」<br />「なにが？　あたしが？」<br />　ルーシーがいってくる。ジョークのつもりだろう。<br />　空から彼女に視線を戻すと、レオナルドはなんとか頷いた。<br />　そうしないといけない気がした、というのもあった。<br /><br />　目に残っていた涙を拭うと、レオナルドは彼女に遅れない様に歩き出した。<br /><br /><br />"LEONARD -- Dark Horse" Closed<br />　<br />　<br /><br /> ]]>
        
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    <title>Episode 20 : cry</title>
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    <published>2010-04-17T23:54:05Z</published>
    <updated>2010-04-17T23:55:49Z</updated>

    <summary>　それは結局。　　　LEONARD 020　Dark Horse　結局もどれたの...</summary>
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        <name>Sho Ayase</name>
        
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        <category term="leonard" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
    
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        <![CDATA[　それは結局。<br /><br />　<br />　<br /><br />　LEONARD 020<br />　Dark Horse<br /><br /><br /><br /><br /><br />　結局もどれたのは十機中九機だった。<br />　次々に着地していく仲間たちの傍で、レオナルドは右エンジンの破損でうまく下がれない。なんとか基地の滑走路に向かって速度をゆるめようとするがうまく効かない。<br />『ランフォ、大丈夫か？』<br />　隣を飛んでいるスコットが尋ねてくる。八機は着陸し、すでに格納庫に入ろうとしている。<br />　だが着陸できない。<br />「レックス」<br />『俺がついてる。安心しろ。ゆっくり高度をさげろ』<br />　基地まであとわずか。<br />　管制塔の脇をかすめる。<br />　一瞬だけ振り返ると黒煙がエンジンからあがっているのが見えた。<br />　滑走路が見える。<br />　揺れながらなんとか飛び続ける。<br />　下に降りていく。<br />『中央プライム、ランフォが操縦不能になってる。緊急着陸態勢を頼む』<br />『了解』<br />　残り二十。<br />　右から着陸。<br />　続いて左。<br />　サスペンションが折れたかとおもったが、問題はなかった。<br />　そのまましばらく滑走路を滑る様に走り、レオナルドの機体は止まった。<br /><br />　しばらく機体を降りれなかった。<br />　マスクを外し、大きく息をつく。ポケットからアビーのドッグタグをとりだし、その表面を触ってみる。<br />　なんだか力をもらえるようで、それでいて切なさがわき上がってきて。<br />　キャノピィをあけて、ベルトを外す。はい出す様にコックピットから出ると、レオナルドはそのまま地面に降り立った。<br />「レオナルド！」<br />　スコットが駆け寄ってくる。<br />「やったなお前！　ホールを倒したんだぜ！」<br />「うん......」<br />　浮かない顔をするレオナルドの周りに仲間たちが集まってくる。<br />　十機の敵機を撃墜するよりホールを倒すことのほうが難しいことはわかる。<br />　だが今のレオナルドはそれを素直に喜べないのだった。<br />　なぜか。<br />　そんなの決まっている。<br />　あれは。<br />「しっかしろよ。ほら」<br />　歓声をあげる仲間たちのなかでもみくちゃにされながらレオナルドはなんとか作り笑いを浮かべてみせた。<br />　だがその目から涙がこぼれる。<br />「どうした？」<br />　怪訝そうに尋ねてくる彼に対してレオナルドは震える声で答えた。<br />「スコット。俺、駄目だ」<br />「駄目じゃないぞ。これでお前もエースの仲間入りだぜ！　喜べよ！」<br />　こちらの頭を抱えてくるとスコットはこちらを引き寄せてくる。<br />「いこう。大佐に報告するんだ」<br />　そしてスコットに支えられながらレオナルドは事務棟に向かって歩いていった。<br />「泣くな。大佐にまたからかわれるぞ」<br />　頭をぐしゃぐしゃとなでられる。<br />　どうしようもない。<br />　理由はわからない。だが涙がとまらないのだった。<br /><br />　大佐の部屋の前にやってくるとスコットはレオナルドを後ろに立たせてきた。自分が先に報告する、ということなのだろう。それから部屋の扉を叩く。<br />「開いてるわ」<br />　中からサーシャの声が聞こえてくる。<br />　入るといつも通り椅子に座った彼女が出迎えてきた。特に変わった様子もないとばかりに済ました表情でコンピュータの画面を眺めていた。<br />　報告は殆どスコットが行った。レオナルドはホールと戦っただけなのだから、今回の作戦にはそれほど関わっていない。それでもつれてきたのはサリーとの偵察任務、そしてホールとのことがあったからだろう。<br />　涙はもう止まっていた。目が赤くはれていたかもしれないが、それをサーシャに指摘されることはなかった。スコットが一通り報告を終えると、彼女はレオナルドに視線を移してきた。<br />「あの機体は、誰の機体？」<br />　スコットが隣からフォローはしてこない。そちらを一瞬だけみてからレオナルドは口を開いた。<br />「アビー・アンダーソン大尉の機体です。大尉はスコットランド・ローズ区で撃墜され......」<br />　ドクのフルネームを忘れたためそこで言葉をきった。<br />「現地の整備士に救われたそうですが、直後に死亡しました。彼のタグを」<br />「ハンドレット少尉の行方はわかる？」<br />「少尉は撃墜されました。スコットランド・ローズ区西の海上で、脱出装置は働きましたが脱出直後に銃殺されました」<br />「そう」<br />　サーシャはそれだけ頷いてくると、左手で書類をまとめた。その所為に一瞬違和感を感じたがなにも言わないでおく。<br />「なにはともあれおつかれさま。データは今後に役立てるわ。いまは、ゆっくり休んで」<br />　スコットが敬礼をするときびすを返して扉に向かって歩き出す。だがレオナルドはそこに立ったまま動かない。<br />「一つ、質問しても良いでしょうか？」<br />　尋ねる。ずっと思っていたことを。<br />「シーナは、死んだんですか？」<br />　そこで間。彼女はしばらく黙り込んだ。その目が一瞬悲しみを光らせたがすぐに引っ込む。それは軍人としてか、司令官としての精一杯の矜持だったろう。<br />　そして絞り出す様に答えてきた。<br />「ええ」<br />「その......どこで？」<br />　予想通りの答えにレオナルドは心が折れそうになるのを感じた。それはスコットも感じただろう。<br />「詳細を聞きたい？」<br />「はい」<br />　頷くと、サーシャは退室しかけたスコットに向かって手招いた。<br />「スコット、一緒に聞いて」<br />「はい」<br />　そこで再び一息つくと、サーシャは話し始めた。<br />「昨日シーナ・クリステンセン中尉は病院で亡くなったわ。死因は自殺。窓まで這っていって、そこから飛び降り。三階だったのだけれど、部屋に誰もいなくなった隙をみて身を投げたみたい。部屋に遺書があって......葬儀はここの基地で行えないかって」<br />「どうしてここで？」<br />「クリステンセン中尉のプライベートに関わることだから本当は機密なのだけど」<br />　そういってサーシャは言葉を切ってくると続けてきた。<br />「彼女、孤児院で育ったのね。だから身柄の受け取り人もいなくて。空軍が代わりに戦死扱いにして葬儀を行うわ」<br />　そういった軍人はたくさんいると聞いている。だがそれはいまは関係がない。<br />　レオナルドはうつむいた。だとすればあれはなんだったのだろう。<br />　ファンタズマ。<br />　亡霊。<br />　言葉がでてこない。<br />　その肩に手が置かれる。<br />「いこう。レオナルド」<br />　小さく頷く。スコットの言葉にもなにも返すことができない。<br />「失礼しました」<br />　部屋をでる。<br />　そこでレオナルドの頬を涙が一筋伝っていった。<br />　<br />　<br /><br /> ]]>
        
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    <title>Episode 19 : NorthLand</title>
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    <published>2010-04-04T05:32:24Z</published>
    <updated>2010-04-04T05:34:57Z</updated>

    <summary>「ランフォが帰還しました！　現在エバンテと単独交戦中です」　レーダー員のその言葉...</summary>
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        <![CDATA[「ランフォが帰還しました！　現在エバンテと単独交戦中です」<br />　レーダー員のその言葉にサーシャは目を見開いた。<br />「距離は」<br />「170。方位070です」<br />「単独は誰が許可を出したの？」<br />「レックスが直接指示をだしました」<br />　頭を振る。レーダーをみながらその位置を確かめる。<br />　高度が高過ぎる。その遥か下方でエアプロ機との戦闘は行われていた。<br />「次長に連絡をとるわ」<br />　そういうとサーシャはレーダー室をでて事務室につながるドアを開いた。<br />　と。<br />　思いもしない人物がサーシャの椅子に座っていた。<br />「よお、サーシャ」<br />　思わず動きを止める。<br />　目を細めながら後ろ手でレーダー室につながる扉を閉める。<br />　そこには行方不明となっていたジャック・ミラー元大佐がいた。<br /><br />　<br /><br />　LEONARD 019<br />　Dark Horse<br /><br /><br />　黙って彼を睨みつけながら、サーシャは唇を噛み締めた。<br />「動かないでくれ。俺も銃は抜きたくないんだ」<br />「なにが目的？」<br />　尋ね返す。ドアの前に立ったまま腕組みをしてみせる。<br />「緊急事態なの。あまりそこに居座ってると逮捕するわよ」<br />「俺は逮捕されるためにきたんじゃない」<br />　みると彼が着ている空軍のジャケットは紋章がない。<br />　だがそれはいまは問題ではない。<br />「お前なら知ってると思うがね、あの計画に誰が使われることになったのか」<br />「あの計画って？」<br />「無人戦闘機計画」<br />　ミラーの口からでたその言葉は司令官レベルの人間にしか知らされていない空軍の極秘プロジェクトだった。どこかのエリアにある非公開基地で開発されているという無人戦闘機。<br />「無人じゃない。人の脳を改造して作る有人に近い戦闘機だ。アザミみたいなリスクを侵すパイロットではなく、危険な任務に投入しても問題ない、パイロットを犠牲にしなくても問題ないマルチロール戦闘機を作る話。知ってるだろ？」<br />「知ってるわ」<br />「じゃあ教えてくれ。どこで開発されて、誰が使われているのか」<br />「それを止めるの？」<br />　ミラーが黙り込んだ。彼は立ち上がると机の横を回り、こちらの正面に立ってきた。<br />　サーシャは煙草を取り出すと口にくわえて、火をつけた。そして煙を吐き出して小さく息をついてみせる。<br />「どうして私に？」<br />「わかってるだろ」<br />　その質問に彼は肩をすくめてみせてきた。<br />「俺は空軍の非人道的なやり方が許せない。何も知らないパイロットたちを戦地に送り込むだけならまだ、利用して改造して、あげくあんなものの犠牲にさせやがる」<br />「テロリストになる気？」<br />「反政府だとテロリストか？　お前もそう考えるのか？」<br />　ミラーが目を細めてきた。その手が懐に入れられる。<br />　次の瞬間素早くサーシャが机の上の携帯に手をのばした。そこにある緊急ボタンさえ押せばひとがくる。<br />　だが次の瞬間抜かれたミラーの銃がサーシャの右腕を撃ち抜いた。サイレンサーの小さな音が部屋に響く。指先だけ触れた携帯が床に転がった。<br />　さらに続けてミラーはサーシャの肩めがけて引き金を引いた。<br />「っ！」　<br />「前妻を撃つのは地獄行きだろうな」<br />　肩を抑えてかがみ込むサーシャを尻目にミラーはそういうと銃口に息を吹きかけた。<br />「カテリーナは死んだんだろう？　ルーシーは元気でやってるのか？」<br />「二十年前のあなたはもっと優しかったのに」<br />　肩を抑えながらサーシャは落とした煙草を足で踏みつぶした。思わず苦笑する。<br />「お前のところにきたのは二人に会うためってのもあったんだけどな」<br />「生きてるわよ。二人とも。パパに会いたがってるんじゃない？　ルーシーはどこいってるかわからないけど」<br />「俺はもう違う」<br />「どうかしら」<br />　サーシャは肩を抑えながら彼の顔をみた。<br />「そうか。カテリーナか」<br />「......」<br />　サーシャは答えない。彼の顔を見る目は感情がこもってない。<br />「お前は、お前というヤツは......俺たちの娘まで軍に渡したのか。この外道が！」<br />　再び銃がこちらに向けられる。<br />「あの、あの腐ったプロジェクトなんかに渡したのか？　あいつを？　あんな腐ったプロジェクトに自分の娘を巻き込むのか！　どこまでお前は狂ってるんだ！？」<br />　引き金が引かれる。一発は床におちた携帯。一発はサーシャの頬をかすめて後ろの壁にあたった。<br />「ふざけやがって！　どこまで......畜生が！」<br />　そこまで罵ってから感情的になったことに気づいたのか、ミラーは息をついた頭を振った。<br />「場所を言え」<br />「嫌よ」<br />　サーシャははっきりと答えた。彼の声がわずかに震えているのがわかった。<br />　その銃口はこちらの眉間を狙っている。<br />「あなたが二十年傍にいてくれたら、こんな狂わなかったのかもね」<br />　ミラーは答えない。<br />　そして黙って銃をしまうと、そのままこちらに踵を返してきた。<br />「もういい」<br />「そう」<br />　サーシャもそれ以上問いつめはしなかった。<br />　扉をあけると、ミラーはその部屋を出て行った。<br />　ようやく静寂が訪れる。壊れた携帯をみながら、そして撃たれた肩に視線を移すとサーシャは大きく息をついた。<br />「ふう......」<br />　そしてそのまま横に倒れた。<br />「母親じゃなくて軍人だもの。私は」<br />　小さく呟く。<br /><br />　＋＋＋＋<br /><br />　ブレイク。<br />　そのまま操縦桿を右に振って、それから下に。<br />　速度をあげる。<br />　エバンテが機銃を放つ。<br />（ロールして）<br />　シーナが言ってくる。<br />　フォーポイントロールでなんとかかわす。ミサイルがロックオンされる。<br />＜ミサイルロックオンされました＞<br />　ピッチダウン。そのまま平行飛行へ。<br />　かく乱フレア。<br />（とにかく面で防御しないと無理よ）<br />　後ろからシーナがアドバイスしてくれるのがありがたかった。<br />　そのままロールしてブレイク。<br />　急旋回をなんどしてもエバンテをやりすごせない。<br />　機銃が放たれる。<br />　今度は右エンジンに命中した。<br />「くそっ」<br />　パワーダウン。<br />　斜めに揺れながら飛ぶ。<br />　コントロールが効かない。<br />（いくわよ、レオナルド）<br />　その声と同時に。<br />　シーナが操縦桿を握った。<br />　そして一気に後ろに引く。そしてスロットルダウン。<br />　最高速度でのコブラ。<br />　エバンテがそれに気づいたかどうかはわからない。<br />　その機体が前方へ。<br />　だが次の瞬間シーナはスロットルを一気に押し上げてきた。<br />　クルピット。<br />（自分の得意技で死んでもらって）<br />　後ろにつく。<br />　エバンテは目前。数メートルも離れていない。<br />　近距離から機銃を放つ。<br />　両エンジンに命中。<br />　エバンテが大きくバランスを崩すと同時に、レオナルドは操縦桿を倒してロール。<br />　右に離脱した。<br />　通信を開く。<br />「限界だ。あとは頼んだよ」<br />　エバンテはそのまままっすぐ。並走するにレオナルドが飛ぶ。<br />　彼はこちらをみてきた。その目に感情が浮かんでいるようには見えない。<br />　羨望だった。<br />「レックス」<br />『オッケー』<br />　後ろからスコット機が高度をあげて現れてきた。助けにきたのだ。<br />『あばよ！　エバンテ！』<br />　ロックオンされたミサイルがエバンテめがけて放たれる。<br />　空対空ミサイルだ<br />　ホーミングされたそれは大きく弧を描き、コントロールの聞かないエバンテの機体に命中。そして。<br />　大きく爆発を起こした。<br />　破片があたりに飛び散る。<br /><br />　それをみながら。<br /><br />　レオナルドは息をついた。<br />　ようやく勝ったのだ。<br />　最強パイロットと言われた彼に、自分は勝ったのだ。<br />（お疲れ様）<br />「うん」<br />　シーナのその言葉に思わず頷いてしまう。<br />　それに対して怪訝そうにスコットが尋ねてきた。<br />『どうした？』<br />　しまった。<br />　通信がつながったままだった。<br />　レオナルドは切るわけにもいかず、何を言おうか迷った。<br />（いいの。黙ってて。みんなによろしくね）<br />「シーナ......」<br />（さよなら。バイバイ）<br />　また涙がでそうになる。だがなんとかこらえた。彼女の気配が消えていく。<br />　辛い。<br />　シーナはもういない。<br />　地上に行けば会えるのだろう。だが、会える気がしなかった。<br />　なんとかレオナルドはスコットに通信を送った。<br />「大丈夫だよ。レックス。それよりそっちはどう？」<br />『ジャミングだった。スピンたちが撃墜してくれた。残りは逃走したから、あとはみんな無事に着地するだけだ』<br />「そう......」<br />　あたりを見回す。<br />　いつもと変わらない青空が広がっている。<br />　だが。<br />　それはいつもとちがって、悲しい色に見えた。 ]]>
        
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    <title>Episode 18 : fantasma</title>
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    <published>2010-03-28T02:09:59Z</published>
    <updated>2010-03-28T02:12:57Z</updated>

    <summary>　包帯が巻かれた手で紙飛行機を折ると、眼前の白い壁めがけて滑空するように放り投げ...</summary>
    <author>
        <name>Sho Ayase</name>
        
    </author>
    
        <category term="leonard" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
    
    <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://srockstyle.com/azami/">
        <![CDATA[　包帯が巻かれた手で紙飛行機を折ると、眼前の白い壁めがけて滑空するように放り投げた。<br />　力が入らない。<br />　弱い動力しか与えられなかったそれはよろよろと動くと壁に当たる前に床に落ちた。<br />　開いた窓から空をみる。<br /><br />　ああ。<br />　今日はちょうど良い日だ。<br /><br /><br />　<br />　LEONARD 018<br />　Dark Horse<br /><br />　<br />　エバンテが急上昇。レオナルドはそれを追った。<br />　なんて速い機体だろう。<br />『ランフォ』<br />　スコットから連絡が入る。<br />『単独交戦を許可する。ただし生きて帰れ。必ずだ』<br />　思わず笑ってしまう。笑みをうかべるとレオナルドは見えない相手に向かって頷いた。「了解、大尉」<br />　エバンテが緩やかなカーブを描きながら高度をあげていく。その後を追いながらレオナルドも高度をあげた。<br />　ダンスパーティは遥か下。機影が次々と減っていく。<br />　あれは味方か。<br />　敵か。<br />　幽霊か。<br />『三度目の正直というわけか』<br />　エバンテが言ってきた。面白いジョークのつもりだろうか。<br />「二度あることは三度あるともいうよ」<br />　皮肉で返しながら下を一瞬だけみる。遥か下。あそこに落ちれば命はない。<br />　もうエバンテが見逃したとしてもそこに自分はいない。<br />　彼が見逃す気があったとしても。<br />　スロットルアップ。操縦桿を押し倒してピッチダウン。エレベータアップ。<br />　エバンテの後ろを尾ける。<br />　レーダーにロック。<br />　機銃を放つ。<br />　斜めに下降しながらエバンテがシックスティーンポイントロール。<br />　機銃をすべて避けきってくる。<br />　レーダーのど真ん中にいるにも関わらずだ。<br />　化け物飛行だ。<br />　今度は空対空ミサイル。二つの枠が揺れながらレーダーを交錯してエバンテを追う。<br />　放つ。だがこれもぎりぎりでそれる。<br />　左へスライスバック。<br />　ロールしてそれを追う。<br />　ドクのチューニングは完璧だった。どの機体よりもコントロールしやすい。<br />　スロットルアップ。<br />　追いながら機銃を放つが見事に回避していく。<br />　エバンテの飛び方は異常だ。<br />　ゆらりゆらりとした飛び方でありながらこちらを誘導するように。<br />　そう、あれはまるで。<br />　地獄へ誘い込む様に。<br />　青空ではなく暗いどこかへ案内するように。<br />　それは悪魔か。<br />　そんなことを考えた瞬間、エバンテの機体がピッチアップ。<br />　そのまま垂直状態になるとハンマーヘッド。<br />　こちらの後ろに流れるようについてきた。<br />『運がつきたな』<br />　振り返る。<br />　そこにはこちらに向きを変えてくるエバンテがいた。<br />　機体の機銃がこちらをむく。<br />　それはスローモーション。<br /><br />　駄目だ。<br /><br />　上手すぎる。<br /><br />　青空の間に見えたそれは黒い固まり。<br /><br />　死だった。<br /><br />　死ぬのか。<br /><br />　左手でポケットのアビーのドッグタグを握りしめる。<br /><br />　謝る暇などないだろう。<br /><br />　誰にも。<br /><br />　しくった。<br /><br />　だが、その瞬間。<br /><br />　コンマ一秒の間だったかもしれない。<br /><br />　自分の機体の、キャノピィの中から、声が聞こえてきた。<br /><br />（なあにやってんのあんた）<br />　その声は続ける。<br />（あんたが積極的なのって、女の子に声かけるときだけ？）<br />　後ろから声が続くと、背後から手が伸びてきてレオナルドが握っていたスロットルの上に手を被せ、それを一気にを引く。<br />　さらにそれは操縦桿を押し倒しながらフレアのスイッチをあげた。<br />「シーナ」<br />　馬鹿な。<br />　彼女がここにいるわけがない。<br />（あたしの知っているレオナルド君はもっとやれるヤツだと思ってたけど）<br />　機体がスポイラを展開。<br />　ピッチダウン。<br />　かく乱フレア。<br />　あたりに炎の玉がはじき出される。<br />　高度を下げながらバレルロール。<br />　エバンテの機銃の弾丸が炎に取り込まれて消えていく。<br />（できるじゃん。その調子）<br />「嘘だ」<br />（何が？）<br />「君が......ここにいる」<br />（一緒にいこう、レオナルド）<br />　彼女はそういってくると斜め前方を飛ぶエバンテを睨みつけた。<br />（一緒にあいつを、撃墜してやりましょ）<br />　レオナルドは目に涙が滲むのがわかった。様々な感情が混じり合って今にも視界が霞みそうだった。<br />　それをシーナが片手で拭ってくる。<br />（弱虫君。泣いている暇はないわよ）<br />　アザミと同じ科白を吐きながら肌に触れてきたたシーナの指先は氷のように冷たかった。まるで涙がそのまま凍ってしまうのではないかというように。彼女はそっと後ろから抱きしめる様にこちらの涙を拭ってくる。<br />　再び前を見る。斜めに高度を落としたところにエバンテはいた。<br />　さらに追う。ピッチダウン。エレベータアップ。<br />　ミサイルロックオン。<br />　眼前のディスプレイに映し出された緑の線がエバンテ機を囲む。<br />（レーダーだけに頼らないで）<br />　シーナが言ってくる。<br />（大切なのはタイミングよ）<br />　スロットルアップ。<br />　速度をあげて相手との距離を詰める。<br />　ブレイク。<br />　照準に定まった。速度も適当なところだ。<br />　機銃を放つ。<br />　エバンテの翼をかすめた。わずかに煙があがる。<br />（その調子）<br />　声に出すと無線で伝わってしまう。シーナの声はまるで心に響いてくるようにレオナルドの耳朶を打った。<br />　息が上がる。胸の鼓動を感じながらエバンテを追う。<br />　相手がピッチアップ。<br />　そのままコブラ。<br />　こちらをやり過ごすと後ろに回ってきた。<br />（ヤツの得意技だわ）<br />「くそっ！」<br />（あれはホントに天才としか言いようがないわね）<br />　あきれたように彼女が言ってくる。<br />　左手にドッグタグを握りしめる。<br />　レオナルドはいつの間にか祈っていた。<br />　アビー。<br />　守ってくれ。<br />　せめて自身の機体とシーナの魂だけでも。<br />　<br />　<br />　 ]]>
        
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    <title>Episode 17 : I Kill Him</title>
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    <published>2010-03-13T23:54:19Z</published>
    <updated>2010-03-13T23:55:48Z</updated>

    <summary>　時計をみながらサーシャはレーダー員に尋ねた。「敵の速度と数は？」「目標方位27...</summary>
    <author>
        <name>Sho Ayase</name>
        
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    <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://srockstyle.com/azami/">
        <![CDATA[　時計をみながらサーシャはレーダー員に尋ねた。<br />「敵の速度と数は？」<br />「目標方位270、数は八十六機。時速四百キロです」<br />　画面を見つめながらレーダー員が答えてくる。サーシャは口元を歪めると小さく息を吸った。<br />「あと何分？」<br />「十分弱で敵機全機が基地上空へ」<br />　軽く舌うちしてから手近にあった無線機を取る。<br />「各チーム状況報告、レックス、スピン！」<br />　スコットとジャックがそれぞれ応答してくる。<br />『準備よし』<br />『準備よし！』<br />「管制官へ。戦闘機部隊から先に出撃させて。スコットのチーム基地前方30キロ地点で迎え打って」<br />　叫ぶように指令を出すとサーシャはレーダーを見つめた。<br />　大量の敵機が、巨大な影のように迫ってくる。<br />　緑の印がレーダーの一角を絵の具で塗りつぶした様に占めていた。<br />「命令は一つだけ。標的を見つけて、撃墜して」<br />　そう言い放つと無線機を置き、頭を抱える。<br />　今までで最も辛い戦いになりそうだった。<br /><br />　<br />　LEONARD 017<br />　Dark Horse<br /><br />　<br />　そのエリアにはいるや対空砲がこちらを狙ってきた。<br />『ここにはレーダーに映らないミサイルもあるから気をつけて』<br />　そのアザミの科白に無茶苦茶だ、と反論しようとしたがそんなことを言える立場でもない。平地での戦いに慣れているレオナルドはこういった場所での対空ミサイルをさけるのは辛いものがある。<br />　アザミと並んで前方から飛沫の様にまき散らされる対空砲の嵐を抜けていく。眼下の林からロックオンされ、放たれたミサイルをかわす。<br />『狙い撃ちされるわ。いったん離れる！』<br />　アザミが無線の向こう側から叫んでくる。再びバレルロール。一気にロックオンされていたミサイルをかわすと前方にあった対空ミサイル発射の機械をロックオン。<br />　操縦桿を引いてピッチアップ。高度を稼ぎながらその場所をさけていく。反対にアザミが円を描くように高度を下げていく。<br />「なにしてんだ！」<br />『ブラストミサイルを貫通させるわ。ランフォピッチアップ！』<br />　指示されるがままに操縦桿を引く。高度を稼ぐと前方から飛んできたミサイルをかわすためにブレイク。<br />　さらにエルロンロール。<br />　地上からミサイルが次から次へと飛んでくる。それもレーダーに映らないため非常に厄介だ。それを機体を流してかわし、高度を稼いでいく。<br />　と、次の瞬間。<br />　下で爆発が起きる。<br />　アザミの機体から放たれたミサイルが山岳地帯にあった洞窟内の敵の基地を貫通したのだ。山の向かい側にあった対空砲を巻き込んで爆発が山間部を覆う。<br />『いくよ。ランフォ。敵はまだ先だよ』<br />　その言葉に頷く。アザミの機体がこちらの隣へやってくる。<br />　そのとおり。戦いはこれからだ。<br />　山間部を抜けると大河がみえた。スコットランド・ローズ地区の終わりだ。<br />「終わりだ」<br />『終わってないでしょ。馬鹿ねえ』<br />　アザミが言ってくる。そのとおりだった。<br />「いってみただけだよ。抜けられた。ありがとう」<br />『あとは自分でなんとかしなさいな』<br />　そういうとアザミはピッチアップ。<br />「こないのか？」<br />『命令をうけてないもの。あれくらいフランクフィールドの精鋭さんたちならなんとかするでしょ。離脱するわ。それじゃあね。弱虫君』<br />　そういうと彼女は翼をすこし揺らしてみせてきた。そのままフランクフィールドとは真逆の方向に方角を変える。<br />　そちらになにがあるかレオナルドは知らない。<br />　ただわかるのは。<br /><br /><br />　シーナが最後に飛んでいった方向と同じということだけ。　<br /><br /><br />　＋＋＋＋<br /><br />　午前五時半。<br />　戦闘機は十機。 攻撃機は五機。格納庫からでてくると滑走路にいたアナキンが腕を振って誘導してくる。そして全機が滑走路に出終わると三本指を立ててきた。<br />　スコットは手を振って親指を立ててみせる。<br />　全機の準備が整うと、アナキンが指で二を示してきた。<br />　それが一になり、人差し指で滑走路を示された瞬間各機が一気に飛び出す。<br />　まずはスコットを含んだ五機。次にテッドを含んだ五機。<br />「一人十匹以上か。数に合わねえな」<br />　そんなことを呟いてみる。ピッチアップ。<br />　隣をみるとテッドの部隊が離陸したところだった。彼は戦闘機でも爆撃機でも操縦できるユーティリティパイロットなので頼りになる。<br />「ミクロラ、調子はどうだ？」<br />　テッドのタックネームで呼びかけるとすぐに返事が返ってきた。<br />『上々。十匹倒せばいいんだな？　エバンテだって六匹とかだった気がするけど』<br />「そうすりゃ爆撃機の連中に迷惑かけなくて済むってわけだ」<br />　エバンテのことは流してスコットは高度をあげ、わずかに方角をかえた。後方の全機がそれについてくる。それにさらに最後尾を守る様にテッドの機体がつく。<br />「中央プライム、方角は合っているか？」<br />『進行方向は現状維持。前方20キロに敵機』<br />『撃墜してやろうぜ』<br />　テッドがどこか高揚した声で言ってくる。<br />　ダンスの始まりだ。<br />「全機解散！　自由行動だ！　十機撃墜して帰れ！　戻って基地を守るんだ！」<br />　スコットはそう叫ぶと各機から返事が返ってくる。ピッチアップ。<br />＜敵機です。遭遇まで十秒＞<br />「敵機の機影発見。ベクター090に設置」<br />『すげえ数だ』<br />　テッドが言ってくる。前方に黒い怪物が迫る様に敵機が固まっている。<br />＜ミサイルロックオンされました＞<br />　電子音声が伝えてくる。<br />　こちらの頭上にやってきた機体がそのミサイルをロックオンした。<br />『リーダー、ミサイル撃墜します。アルフィ戦闘に入ります！』<br />「了解。頼む」<br />　頭上にやってきた仲間に返事をすると、スコットはそのまま直進。敵機が次々と高度を下げ、こちらの機体と戦闘に入る。<br />　空を埋め尽くす無数の敵機。<br />　前方で爆発が起きる。仲間の放ったミサイルが敵のミサイルを撃墜したのだ。<br />　五機の敵機がこちらの周りを取り囲む。<br />　悪態をつきながらエルロンロール。そのまま抜け出すと前方にいた一機を捉える。<br />　機銃を放つ。右エンジンが動力を失うのが見えた。<br />　さらに前方に追われてる仲間を見つける。ハリウッドだ。<br />『レックス、助けてくれ！　追われてる』<br />「こっちの真っ正面だ！　撃墜する」<br />　ミサイルロックオン。レーダーが敵機を狙う。<br />　スロットルをあげる。ホーミング。<br />　いまだ。<br />　発射された空対空ミサイルが敵機の翼を爆破した。<br />　命中。<br />　だがまだいる。<br />　上空ではさらに数がいる。<br />「ジャミングか？」<br />『ジャミング？』<br />　小さく呟く。それにテッドが返してきた。<br />『この機影うそっぱちってことか？』<br />　ピッチアップ。垂直上昇。上に見えた爆撃機の腹めがけてミサイル発射。<br />　スコットはその瞬間目を細めた。<br />　なるほどな。<br />　絡繰りがわかれば怖くない。<br />「敵戦闘機は精鋭だらけだ。気をつけろ」<br />　と。<br />　レーダーに別の機体が映った。スコットの正面、距離は離れていない。<br />「本命登場かい」<br />　呟く。<br />　その機体をやり過ごす。後方から機銃で狙い撃つ。<br />「ひさしぶりだ、エバンテ」<br />　挨拶代わりとばかりにそういうとすれ違い様スコットはブレイク、相手の後ろを付けねらう。その機体に模様が描かれていたことを見逃さない。<br />　照準にとらえるとそのまま機銃を放つ。相手はバレルロールしながらそれを回避。<br />『速度がつきすぎてるぞ。レックス』<br />　一言だけ無線が来る。それはこちらに放った物だが、その場にいたパイロット全員に聞こえる物でもあった。<br />　フランクフィールドのパイロットたちがエバンテの存在を知る。<br />　その瞬間相手がコブラ。機種をあげたままスロットルダウン。<br />　スコットの機体をやり過ごすと一回転してクルピット。<br />　あっという間に立場が逆になった。<br />「畜生！」<br />　レックスが呟くと同時に相手が言ってくる。<br />『接近戦となると無茶は相変わらずだな』<br />　機銃が放たれる。急いでエルロンロール。かわしながら斜めに高度を落とす。<br />　と。<br />　エバンテの後ろに一機、新しい機体が現れる。正体不明機だ。距離を取って超音速で近づいてくる。<br />（新手かよ！）<br />　ロールしながら現れたそれはこちらではなくエバンテをロックオンしてきた。さらにこちらに通信で伝えてきた。<br />『レックス！　かく乱フレア！』<br />　言われるがままにフレアを放つ。バレルロール。空中に霧散した炎の玉が機体の姿を眩ませる。それと同時に後ろにいた相手がエバンテにめがけてミサイルを放った。<br />　エバンテが垂直上昇のあとテールスライド。ミサイルをやり過ごす。そのミサイルがこちらの脇をかすめてゆく。<br />　苦情の一つでもいってやろうかとおもったがロックオンから外れたことを確認できたのでよしとする。そしてその声にスコットは半ば高揚しながら叫んだ。<br />「レオナルドか！　戻ってきたのかよ」<br />『ランフォって呼んでよ！　俺も戦うよ！』<br />『レオナルドだって？』<br />　テッドが言ってくる。<br />『サリーはどうしたんだよ！？』<br />『話は後！　それより俺にやらせて！』<br />「何をだ？」<br />　既に次の機体を追っているスコットとテッドを尻目に、レオナルドは通信に向かって思い切り叫んできた。<br />『エバンテを撃墜するんだ！』<br />　それはパイロットたち全員、そしてエバンテと敵機全体に大きく伝わった。 ]]>
        
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    <title>Episode 16 : in a split second</title>
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    <published>2010-02-28T00:27:00Z</published>
    <updated>2010-02-28T00:32:11Z</updated>

    <summary>　空を見上げると、巨大な爆撃機と戦闘機が飛んでいくのが見えた。数えきれない数の戦...</summary>
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        <name>Sho Ayase</name>
        
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    <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://srockstyle.com/azami/">
        <![CDATA[　空を見上げると、巨大な爆撃機と戦闘機が飛んでいくのが見えた。数えきれない数の戦闘機が飛んでゆく。<br />　その方角は明らかにフランクフィールドだった。<br /><br />　アザミは舌打ちしながら、吸おうと手に持っていた煙草を握りつぶした。<br /><br />　LEONARD<br />　Dark Horse 16<br /><br />　その轟音にレオナルドは目をさました。くるまっていた寝袋を捨てながら立ち上がると、上を見上げる。<br />　アビーの機体と、その上の屋根、さらにその上から聞こえてくるそれは地面とレオナルドの体を揺らしてきた。<br />　立ったまま屋根を睨みつけていると、横から声がかかった。<br />「準備はいい？」<br />　そちらに視線を移すと入り口に寄りかかった姿勢で、昨日と変わらない格好のアザミが立っていた。どこに泊まっていたのだろう。恐らくはドクに一室を借りていたのだろうと予想を付ける。<br />　こちらの格好を頭からつま先まで一通りみてくると彼女はにやっと笑い、それからドッグタグを投げてよこしてきた。手をあげてそれを受け取る。<br />　それをみると昨日レオナルドが奪われたものだった。<br />「腐ってないようで安心した。いくよ。弱虫くん」<br />　それだけを伝えてくると彼女はこちらに踵を返して歩いていく。<br />　その背中を見送りながらレオナルドは再び天井を見上げた。<br />　まだ、自分はいけるのだろうか。<br />「誰が弱虫だよ」<br />　小さく呟いてみる。<br />　それがアザミに聞こえたかどうかはわからない。<br /><br />　<br />「それじゃ、出すぞ」<br />　そういうとドクは手元にあるラップトップで機体の操作を開始した。少しの間を置いて工房の扉が開き、修繕された元アビーの戦闘機が姿を現した。それは工房兼格納庫の裏に設置されていた滑走路にでてくると離陸できる位置に止まる。<br />　その隣には既にアザミの機体もスタンバイされていた。それをみながら彼女は小さく笑った。<br />「それじゃ、いきますかね」<br />　彼女が戦闘機に向かって歩いていく。ドクはその背中を見送りながらレオナルドの肩を叩いてきた。<br />「せいぜい守ってもらいたまえ」<br />「なにいってんですか」<br />　言い返す。それから一度だけ彼女の背中を見た後、レオナルドはドクに視線を戻し、<br />「機体をありがとう。あと色々」<br />「気にするな。仕事だから」<br />　彼はそういうとにっと笑った。そして機体の鍵を手渡してくる。<br />「生きて帰れ。レオナルド」<br />　その言葉はいままでのどの言葉より重く感じられた。渡された鍵を握り閉めると、どこか新しい自分になれるような気さえした。完全に。とりとめもなく。<br />　遠くを見る。滑走路の先は海、海の上は青空だ。<br />　<br />　さあ、出発の時間だ。<br /><br />　＋＋＋＋<br /><br />　機体に乗り込むとレオナルドはマスクをつけた。キャノピィをわざとゆっくりと閉じると、大きく深呼吸。そして手のひらを縦に振って準備万全であることを二人に告げる。<br />　滑走路の前方でドクとエミリーがこちらを見ているのがわかったからだ。<br />　小さく頷いてみせるがそれが彼らに見えたかどうかはわからない。<br /><br />　エミリーが手をあげてきた。その指を三本たてて。<br />　手元のレーダーを確認。エンジンをかける。<br />　彼女の指が二を示してくる。スロットルをあげると機体のエンジンが大きく唸る。黒の翼が大きく風をきるように揺れる。<br />　隣ではアザミの機体が同じく飛行体制に入っていた。<br />『幸運を。外すぞ』<br />　ドクのその無線と同時にエミリーが親指を立てた。その瞬間一気に二人の機体は一気に前方に押し出された。それと同時にリヒート。<br />　速度があがっていく。前方に見えるのは海面と滑走路の終わり。<br />　<br />　そして、空の始まり。<br />　二人の機体は一気に空に押し上げられた。前をみると青空に向かって進んでいくのを感じる。<br />　フラップアップ。<br />　高度を稼いだあとわずかにヨーイング。研究所を見ようと振り返ったが視界には入らない。<br />『感覚はどう？』<br />　と、突然無線が入ってくる。アザミからだ。<br />「問題ないよ。ビックリするくらいしっくりくるんだ」<br />『そう、それはよかった』<br />　アザミの機体がシックスティーンポイントロール。方向を変えるのかと思いきや彼女はそのまま360度ロールしながらこちらの頭の上を飛んでいく。そして斜め前につくと右へヨーイングした。<br />　危険な飛び方だ、とレオナルドは思った。おそらく飛行マニュアルにはない飛び方かもしれない。そのままジェット気流に巻き込まれれば命はないだろう。<br />　だがそんなことは関係ないとばかりに彼女は軽い口ぶりで伝えてきた。<br />『着いてきて。出口まで案内する』　<br />「了解」<br />　彼女に合わせてロール。レオナルドのロールは方向転換に使う程度のものだ。そのまま高度を保ちながら方角を定める。<br />　サリーとやってきた場所と同じ景色がそこにあった。しばらく機体に触ってなかったが、ドクの訓練プログラムのおかげか、それほど久しぶりという感じはしていない。逆にその自然に入っていける感覚がレオナルドの不安を冗長させていた。このまま戦闘に入ったらどうなるか。これから行く先は敵戦闘機が大量にいる戦線になるというのに。<br />　こちらのその不安を知って知らずか、アザミがこちらに声をかけてきた。<br />『そういえばさぁ、あんたタックネームは？』<br />「タックネーム？」<br />『そ、呼び合うとき不便でしょ』<br />「一緒に戦う？　ここから先そんなことあるのかい？」<br />『あんたあたしがいないと生き残れないでしょ。結構ハードだよ。ここから先』<br />　失礼な、とも思ったが実際彼女の存在は頼りになる。何かあったときのために教えあっておいて不便はないだろう。<br />　それこそ、地上にいたときにやるようなものなのだが。<br />「ランフォ」<br />『そ。あたしはディーノ。守ってあげるから遅れないように』<br />　どうも子供扱いされているような気がしてならない。素人扱い、とでもいうのだろうか。<br />　エースではないのは確かだが、レオナルドも一応フランクフィールドのパイロットだ。スコットやホールのようにベストオブベストの一パーセントではないにしろ中の上程度に入る自負はある。<br />　と、斜め前方に三つの機影を発見した。<br />『敵機発見。コード090に設定するよ』<br />　先にアザミから通信がきた。<br />「三機で間違いない？」<br />『よくできました。山間部の対空エリアに入るにはあいつら撃墜が条件ね』<br />　そういうとアザミの機体は一気に加速。速度を800まであげてきた。レオナルドも負けじと続く。<br />　こちらにむかってミサイルが放たれてくる。空対空ミサイルだ。レオナルドが離脱しようとした瞬間アザミがそれにミサイルをロック、空中で撃墜した。<br />『一機よろしく』<br />　それだけを伝えてくると彼女は速度をあげていく。<br />　高速で頭すれすれを飛んでいく敵機。<br />　シャンデル。方向を変える。<br />　アザミはそのままスピリットS。<br />　敵は横にヨーイングしたところだった。こちらに二機。アザミ方向に一機。<br />　計算違いだがどうってことはない。眼前にいた敵にミサイルをロックする。<br />「みてろ」<br />　口の中だけでつぶやく。<br />　わずかにロールしてサイドスリップ。照準を定めるとミサイルから機銃に変えて敵機に向かって放つ。<br />　敵の右エンジンが煙をあげるのが見えた。だがまだ浅い。<br />　敵機が眼前を横切る。それを追いかけるように方向転換。ピッチアップ。エレベータダウン。<br />　ミサイルをロック。<br />　敵がフレアを使ってくる。そのままロールして斜め上へ急上昇。バレルロール。<br />　炎をかわすように舵を切る。<br />　機体は驚くほど軽かった。誰かが守ってくれているかのように。<br />　抜けきると相手の尾翼は眼前。ミサイルから機銃へ切り替えると放つ。<br />　今度は逆側のエンジンを破壊。<br />　動力を失った敵機がバランスを失い、黒煙をあげながら落ちていく。下は海だ。<br />　助かる見込みはないだろう、とレオナルドは思う。<br />　刹那。<br />　背後に敵機が迫る。<br />＜ミサイルロックオンされています＞<br />　機会音声が伝えてくる。唇を噛むとフレアのスイッチをあげる。<br />　ロールしながらかく乱フレア。<br />　さらにバレルロール。<br />　ピッチダウンして高度をさげる。相手はしつこい。<br />　刹那。<br />『ランフォ、減点1』<br />　通信がはいる。アザミだ。<br />　彼女が突然レオナルドの後方に現れる。敵機のさらに後方。すでに自分の相手は倒したということなのか。<br />　次の瞬間にはアザミの機体から放たれた機銃が敵の機体を破壊していた。爆発炎上した敵機がそのままぐるぐる回りながらこちらの横を落ちていく。<br />『フットボールだったらイエローカード物だよ』<br />「あー」<br />　ジョークが通用しないわけではない。でも彼女の指摘はもっともだった。一機だけに集中しすぎたのだ。<br />「うん。助かった。ありがとう」<br />『今のは前戯。本番はこれから。次はないよ』<br />　そういうと再びエルロンロールしながらこちらの上を超え、それから彼女は速度をあげた。レオナルドも負けじと続く。<br />　その先にあるのはフランクフィールドとスコットランド・ローズ自治区を隔てる危険空域。そして対空地帯。<br />　入るより出るほうが難しいのだろう。<br />　まだ終わっていない。アザミの言う通り、始まりはこれからなのだ。<br /> ]]>
        
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    <title>Episode 15 : high speed</title>
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    <published>2010-02-21T00:29:25Z</published>
    <updated>2010-02-28T00:25:24Z</updated>

    <summary>　夜。「あー」　ベッドに倒れ込みながらレオナルドはぼんやりと声を出した。なんだか...</summary>
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        <name>Sho Ayase</name>
        
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        <category term="leonard" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
    
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        <![CDATA[　夜。<br />「あー」<br />　ベッドに倒れ込みながらレオナルドはぼんやりと声を出した。なんだかいろいろ吹っかけられてどうでもよくなるような、そんな感覚が体を支配していた。<br />　電気がつけられていない中でそのまま茫洋とした意識の中でまどろんでいると突然横から声をかけられた。<br />「大変だな」<br />「うわあ！」<br />　おもわず声をあげて驚く。間もなく電気がつけられ、そちらをみるとそこには煙草を銜えたドクが立っていた。火はついていない。<br />「ああああああんたなにやってんだそんなところで！」<br />「いやあ、レオナルド君が無理難題を吹っかけられたようなのでね。心配で」<br />「ホント？　うれしいな」<br />「嘘だ」<br />　その言葉に脱力しながら言い返す。<br />「あんた最低だ」<br />「よくいわれる。それにしても明日は難しいぞ。機体はともかく、お前さんの準備ができてないだろう。間違いなく」<br />　険しい目でこちらをみてくるとドクは煙草をシガレットケースに放り込み、部屋の窓を閉めた。なんで銜えていたのだろうか。レオナルドが喫煙者だと知らないからだろうか、それはよくわからない。<br />　ドクは普段は研究室にこもっているため、あまり顔をみせることはない。レオナルドが呼ばれるのもエミリーで、連れて行かれた先にドクがいるといった具合だ。普段本人がこうしてこちらに出向くのは珍しいと言っていい。<br />　彼はこちらを鋭い目で見据えてくると、<br />「機体はいつでも大丈夫だ。ただ僚機がクエンフィールドだからな。どれだけついていけるかかな」<br />「どれだけ？」<br />「最高速度が足りない。機種が違うんだ。お前の機体は小さい分小回りが効くがスピードに劣る。クエンフィールドの乗る機体は最新型でスピードがでる」<br />「はあ......」<br />「まあ、エバンテの戦闘はさけられないだろうしな。そこはがんばれ。で、行けそうなのか？」<br />「いや......微妙」<br />　その対応はドクの表情をわずかに動かした。彼は笑みを浮かべてみせてきたが、それは無理矢理ではなく、当然だろう、という笑みだ。<br />　部屋にしばらく間ができた。風船を詰め込んだような空気の張りが感じられた。<br />　レオナルドの居心地が悪くなり始めた頃、ドクが突然口を開いてきた。<br />「そこで提案なんだがね」<br />　ぴっと指を立ててドクが続けてくる。<br />「アビーの機体に乗ってみないか？」<br />「アビー？」<br />「アビー・アンダーソン。戦闘機に乗っての出撃だったみたいだが、ヤツじゃ本当は爆撃専門の人間なんだ。何故かは知らないが俺があいつを回収したとき、戦闘機だった。それも、最新型だった」<br />　レオナルド自身はアビーと直接の面識はない。シーナの婚約者だった、程度だ。彼が、戦闘機でここを経由しなければならない理由があったのだろうか。<br />「機密を漏らすとクビが飛ぶんだがね」<br />　ドクはそう前置きすると入り口に向かって歩き出した。<br />「来な。教えてやるよ」<br /><br />　<br />　墓地が近いとあって夜の庭園は微妙な不気味さがあった。レオナルドはそこをドクの隣をついていった。<br />　歩きながらドクは自らのことを明かし始めた。<br />「俺とエミリーは空軍から派遣されたメカニックなんだ。登録もされてる。ここに入ってきたパイロットを回収して機密を守るのが役目だ」<br />「回収？」<br />「普通外には出さないんだけどな。そんなわけで俺たちのことは次長しかしらない。他の大佐連中はフリーだと思っている」<br />「だからエバンテも修理してたのか」<br />　目を細めながらレオナルドが問いかけるとドクは頭を振ってきた。<br />「あれはフリーランスワーク。入るぞ」<br />　三つある工房のうち、真ん中の「２」という数字が書かれた建物に近づくと、工房の入り口にあるレーダー鍵に手をおいた。認証が通され、扉が開く。<br />「アビーは撃墜されたときとある極秘任務を預かってた。科学研究所の連中が開発した兵器を運ぶ仕事だったらしい。ちょうどそのとき俺の所にきてたパイロットがその任務を引き継いでいった。その直後にアビーは死んだ」<br />　淡々と話しながらドクは中に入っていった。<br />「墓は見たか？」<br />「うん」<br />　返しながらレオナルドはポケットに手を入れた。そこにあるのは土にまみれたアビーのドッグタグ。こちらの様子をみてにやっと笑うと、<br />「それ、アビーの親にでも返してやりな。この場合は上司かな」<br />　そうはならないだろうな、とレオナルドは思った。手に触れた瞬間返すべき相手が思い浮かんだ。<br />　スイッチを入れる音がしてその工房の明かりがつく。あちこちに工具や燃料がおいてあり、その真ん中に一機の戦闘機があった。<br />「これ......」<br />「ストロークF09。最新型だ。公式に使用もされていない。多分そろそろ始まる頃じゃないかとは思うがね。でも実際の設計とはちと違う。中身は完全に取っ払って俺が特別仕様に変えてある。完全空中戦闘仕様さ。特殊ブレイ空対空ミサイルにリボルバーカノンの機銃を備えてる。レーダーと火器管制装置もチューンナップした」<br />「つまり？」<br />「腕で勝てないならマシンで勝て、てことだ」<br />　ドクは煙草を取り出すとそれを銜えて火をつけた。煙を吐き出しながらにやりと笑ってみせてくる。<br />　地上にあるどの機体よりも速く、高く飛べる。そういうことだろう。詳しいことはよくわからないがどうやらドクはアビーの機体を完全に改造してしまったらしい。<br />「それはいいの？」<br />「この機体は公式にはもう存在しないことになっている。あとはお前の体がなじめば一番いいんだがね。乗ってみるか？」<br />「今？」<br />「そう、今」<br />　そういって彼はこちらに一つのキーホルダーにつながれた鍵を投げてよこした、それをつかむとレオナルドはその黒い機体を見上げた。<br />　乗るしかないか。<br />　機体の翼をつかんでキャノピィを開くと、どうやら複座の機体のようだった。前の席に座ってあたりを確認する。<br />　その時自分を襲った感覚にレオナルドは驚いた。<br />　まるで自分がかつていた場所に戻ってきたような、そんな感覚。<br />　驚くほどしっくりきたそれに戸惑う。<br />「どうだ？」<br />「いけそう。これなら」<br />「アビーとお話してみろよ」<br />　煙草を吹かしながらそんなことをドクは言ってきた。霊魂を信じる性質ではないので、さすがに笑って流したが。<br />　機体から降りるとレオナルドは素直に気持ちを口にした。<br />「やばいくらいしっくりくるよ。なんなんだろう。あれ」<br />「さあ......」<br />　そういうとドクは煙を吐き出しながら肩をすくめて見せた。そしてこちらにきびすを返すと工房の出口二向かって歩いていく。<br />「俺は寝る。明日だろ？」<br />「うん」<br />「お前も寝れば？」<br />「しばらくここにいるよ」<br />「ああ、そうか。明日に響かないようにな」<br />　妙に優しいその台詞にひっかかるものを感じながらレオナルドは彼の背中を見送った。<br />　明日はいよいよ本番なのだ、ということだろう。正直不安もある。だが、この機体に乗った瞬間、なにかに背中を押されたように、今まで自分を支配していた暗い気分が霧のように晴れていく。<br />　雲海を飛び出したときのような感覚。<br /><br />「ははっ、なんだこれ」<br /><br />　思わずつぶやく。その瞬間レオナルドは腹を抱えて笑った。<br />　どうしようもない感情が這い上がってくる気がして。<br /><br />　＋＋＋＋<br /><br />　夜、フランクフィールド基地。<br />　そろそろ日付も変わろうかというころ、サーシャのオフィスの電話が鳴った。<br />「フランクフィールド。オペレーター？」<br />　そういった後しばらく相手の言葉を聞くとため息をつく。<br />「そう、ええ。わかりました。こちらにはいつ？」<br />　手元のメモ用紙にペンを走らせながら唇をかむ。ペンを置くと窓の方に視線を移した。<br />「明日の何時に？」<br /><br />　午前五時。<br />　ドアがノックされる。<br />「大佐、入りますよ？」<br />「どうぞ」<br />　扉が開いてやってきたのはスコットとジャックだった。二人を迎えると、サーシャは机の前にある椅子に座るように促す。<br />「スコット今日早番よね」<br />「緊急事態ですか？」<br />「ええ」<br />　それだけを返すとキーボードをたたく。<br />「レーダー員がストックランド・ローズ区から敵戦闘機の集団が向かっているのを確認したわ」<br />「こちらに？」<br />「ええ。ルートからたどると間違いなくここの爆撃を狙ってる。それを阻止して」<br />「了解です。敵は何機です？」<br />　そこで一瞬サーシャは間を置いた。<br />「およそ100」<br />「ずいぶんな数ですね。青空も真っ黒になりますね」<br />　自虐的にジャックが笑った。それに対してサーシャは頭をふると、<br />「近辺の基地に援助を求めてるけど反応がよくないの。今ここの戦力でしばらく持ちこたえるしかないわ」<br />「今居るパイロットは十五人ですよ？　新人もいますし爆撃機軍団にドックファイトは厳しいんじゃないかと......」<br />　ジャックがそういうとスコットがその肩をたたいた。<br />「戦う前から弱気になってどうする」<br />「そういうこと。状況が状況だから仕方ないものね」<br />　エンターキーを押すとサーシャの脇のプリンタから書類がでてきた。<br />「次長に許可はもらったわ。これがその証明になる。君たち二人はリーダーとして自分のチームに伝えて。スコットは戦闘機のみんなを、シュート君は爆撃機軍団のみんなを攻撃機で出撃させて。ルートを調べたら連絡するから、燃料の残量次第では敵の本拠地を叩くかもしれない」<br />「了解です」<br />　二人は敬礼した。部屋を出ようとしたスコットの背中にジャックのやや弱気な声がかかる。<br />「シーナが入ればすこし違うのかな」<br />「どうだかね。一人十機撃墜すれば元がとれる」<br />　あっさりとそういう彼にサーシャは伝えようとしたが、なにも言えなかった。<br />「......」<br />　いずれ彼らも知ることになるだろう。だがそれは生きて帰ってきてからだ。<br />　<br />　<br /><br />　<br />　<br />　夜。<br />「あー」<br />　ベッドに倒れ込みながらレオナルドはぼんやりと声を出した。なんだかいろいろ吹っかけられてどうでもよくなるような、そんな感覚が体を支配していた。<br />　電気がつけられていない中でそのまま茫洋とした意識の中でまどろんでいると突然横から声をかけられた。<br />「大変だな」<br />「うわあ！」<br />　おもわず声をあげて驚く。間もなく電気がつけられ、そちらをみるとそこには煙草を銜えたドクが立っていた。火はついていない。<br />「ああああああんたなにやってんだそんなところで！」<br />「いやあ、レオナルド君が無理難題を吹っかけられたようなのでね。心配で」<br />「ホント？　うれしいな」<br />「嘘だ」<br />　その言葉に脱力しながら言い返す。<br />「あんた最低だ」<br />「よくいわれる。それにしても明日は難しいぞ。機体はともかく、お前さんの準備ができてないだろう。間違いなく」<br />　険しい目でこちらをみてくるとドクは煙草をシガレットケースに放り込み、部屋の窓を閉めた。なんで銜えていたのだろうか。レオナルドが喫煙者だと知らないからだろうか、それはよくわからない。<br />　ドクは普段は研究室にこもっているため、あまり顔をみせることはない。レオナルドが呼ばれるのもエミリーで、連れて行かれた先にドクがいるといった具合だ。普段本人がこうしてこちらに出向くのは珍しいと言っていい。<br />　彼はこちらを鋭い目で見据えてくると、<br />「機体はいつでも大丈夫だ。ただ僚機がクエンフィールドだからな。どれだけついていけるかかな」<br />「どれだけ？」<br />「最高速度が足りない。機種が違うんだ。お前の機体は小さい分小回りが効くがスピードに劣る。クエンフィールドの乗る機体は最新型でスピードがでる」<br />「はあ......」<br />「まあ、エバンテの戦闘はさけられないだろうしな。そこはがんばれ。で、行けそうなのか？」<br />「いや......微妙」<br />　その対応はドクの表情をわずかに動かした。彼は笑みを浮かべてみせてきたが、それは無理矢理ではなく、当然だろう、という笑みだ。<br />　部屋にしばらく間ができた。風船を詰め込んだような空気の張りが感じられた。<br />　レオナルドの居心地が悪くなり始めた頃、ドクが突然口を開いてきた。<br />「そこで提案なんだがね」<br />　ぴっと指を立ててドクが続けてくる。<br />「アビーの機体に乗ってみないか？」<br />「アビー？」<br />「アビー・アンダーソン。戦闘機に乗っての出撃だったみたいだが、ヤツじゃ本当は爆撃専門の人間なんだ。何故かは知らないが俺があいつを回収したとき、戦闘機だった。それも、最新型だった」<br />　レオナルド自身はアビーと直接の面識はない。シーナの婚約者だった、程度だ。彼が、戦闘機でここを経由しなければならない理由があったのだろうか。<br />「機密を漏らすとクビが飛ぶんだがね」<br />　ドクはそう前置きすると入り口に向かって歩き出した。<br />「来な。教えてやるよ」<br /><br />　<br />　墓地が近いとあって夜の庭園は微妙な不気味さがあった。レオナルドはそこをドクの隣をついていった。<br />　歩きながらドクは自らのことを明かし始めた。<br />「俺とエミリーは空軍から派遣されたメカニックなんだ。登録もされてる。ここに入ってきたパイロットを回収して機密を守るのが役目だ」<br />「回収？」<br />「普通外には出さないんだけどな。そんなわけで俺たちのことは次長しかしらない。他の大佐連中はフリーだと思っている」<br />「だからエバンテも修理してたのか」<br />　目を細めながらレオナルドが問いかけるとドクは頭を振ってきた。<br />「あれはフリーランスワーク。入るぞ」<br />　三つある工房のうち、真ん中の「２」という数字が書かれた建物に近づくと、工房の入り口にあるレーダー鍵に手をおいた。認証が通され、扉が開く。<br />「アビーは撃墜されたときとある極秘任務を預かってた。科学研究所の連中が開発した兵器を運ぶ仕事だったらしい。ちょうどそのとき俺の所にきてたパイロットがその任務を引き継いでいった。その直後にアビーは死んだ」<br />　淡々と話しながらドクは中に入っていった。<br />「墓は見たか？」<br />「うん」<br />　返しながらレオナルドはポケットに手を入れた。そこにあるのは土にまみれたアビーのドッグタグ。こちらの様子をみてにやっと笑うと、<br />「それ、アビーの親にでも返してやりな。この場合は上司かな」<br />　そうはならないだろうな、とレオナルドは思った。手に触れた瞬間返すべき相手が思い浮かんだ。<br />　スイッチを入れる音がしてその工房の明かりがつく。あちこちに工具や燃料がおいてあり、その真ん中に一機の戦闘機があった。<br />「これ......」<br />「ストロークF09。最新型だ。公式に使用もされていない。多分そろそろ始まる頃じゃないかとは思うがね。でも実際の設計とはちと違う。中身は完全に取っ払って俺が特別仕様に変えてある。完全空中戦闘仕様さ。特殊ブレイ空対空ミサイルにリボルバーカノンの機銃を備えてる。レーダーと火器管制装置もチューンナップした」<br />「つまり？」<br />「腕で勝てないならマシンで勝て、てことだ」<br />　ドクは煙草を取り出すとそれを銜えて火をつけた。煙を吐き出しながらにやりと笑ってみせてくる。<br />　地上にあるどの機体よりも速く、高く飛べる。そういうことだろう。詳しいことはよくわからないがどうやらドクはアビーの機体を完全に改造してしまったらしい。<br />「それはいいの？」<br />「この機体は公式にはもう存在しないことになっている。あとはお前の体がなじめば一番いいんだがね。乗ってみるか？」<br />「今？」<br />「そう、今」<br />　そういって彼はこちらに一つのキーホルダーにつながれた鍵を投げてよこした、それをつかむとレオナルドはその黒い機体を見上げた。<br />　乗るしかないか。<br />　機体の翼をつかんでキャノピィを開くと、どうやら複座の機体のようだった。前の席に座ってあたりを確認する。<br />　その時自分を襲った感覚にレオナルドは驚いた。<br />　まるで自分がかつていた場所に戻ってきたような、そんな感覚。<br />　驚くほどしっくりきたそれに戸惑う。<br />「どうだ？」<br />「いけそう。これなら」<br />「アビーとお話してみろよ」<br />　煙草を吹かしながらそんなことをドクは言ってきた。霊魂を信じる性質ではないので、さすがに笑って流したが。<br />　機体から降りるとレオナルドは素直に気持ちを口にした。<br />「やばいくらいしっくりくるよ。なんなんだろう。あれ」<br />「さあ......」<br />　そういうとドクは煙を吐き出しながら肩をすくめて見せた。そしてこちらにきびすを返すと工房の出口二向かって歩いていく。<br />「俺は寝る。明日だろ？」<br />「うん」<br />「お前も寝れば？」<br />「しばらくここにいるよ」<br />「ああ、そうか。明日に響かないようにな」<br />　妙に優しいその台詞にひっかかるものを感じながらレオナルドは彼の背中を見送った。<br />　明日はいよいよ本番なのだ、ということだろう。正直不安もある。だが、この機体に乗った瞬間、なにかに背中を押されたように、今まで自分を支配していた暗い気分が霧のように晴れていく。<br />　雲海を飛び出したときのような感覚。<br /><br />「ははっ、なんだこれ」<br /><br />　思わずつぶやく。その瞬間レオナルドは腹を抱えて笑った。<br />　どうしようもない感情が這い上がってくる気がして。<br /><br />　＋＋＋＋<br /><br />　夜、フランクフィールド基地。<br />　そろそろ日付も変わろうかというころ、サーシャのオフィスの電話が鳴った。<br />「フランクフィールド。オペレーター？」<br />　そういった後しばらく相手の言葉を聞くとため息をつく。<br />「そう、ええ。わかりました。こちらにはいつ？」<br />　手元のメモ用紙にペンを走らせながら唇をかむ。ペンを置くと窓の方に視線を移した。<br />「明日の何時に？」<br /><br />　午前五時。<br />　ドアがノックされる。<br />「大佐、入りますよ？」<br />「どうぞ」<br />　扉が開いてやってきたのはスコットとジャックだった。二人を迎えると、サーシャは机の前にある椅子に座るように促す。<br />「スコット今日早番よね」<br />「緊急事態ですか？」<br />「ええ」<br />　それだけを返すとキーボードをたたく。<br />「レーダー員がストックランド・ローズ区から敵戦闘機の集団が向かっているのを確認したわ」<br />「こちらに？」<br />「ええ。ルートからたどると間違いなくここの爆撃を狙ってる。それを阻止して」<br />「了解です。敵は何機です？」<br />　そこで一瞬サーシャは間を置いた。<br />「およそ100」<br />「ずいぶんな数ですね。青空も真っ黒になりますね」<br />　自虐的にジャックが笑った。それに対してサーシャは頭をふると、<br />「近辺の基地に援助を求めてるけど反応がよくないの。今ここの戦力でしばらく持ちこたえるしかないわ」<br />「今居るパイロットは十五人ですよ？　新人もいますし爆撃機軍団にドックファイトは厳しいんじゃないかと......」<br />　ジャックがそういうとスコットがその肩をたたいた。<br />「戦う前から弱気になってどうする」<br />「そういうこと。状況が状況だから仕方ないものね」<br />　エンターキーを押すとサーシャの脇のプリンタから書類がでてきた。<br />「次長に許可はもらったわ。これがその証明になる。君たち二人はリーダーとして自分のチームに伝えて。スコットは戦闘機のみんなを、シュート君は爆撃機軍団のみんなを攻撃機で出撃させて。ルートを調べたら連絡するから、燃料の残量次第では敵の本拠地を叩くかもしれない」<br />「了解です」<br />　二人は敬礼した。部屋を出ようとしたスコットの背中にジャックのやや弱気な声がかかる。<br />「シーナが入ればすこし違うのかな」<br />「どうだかね。一人十機撃墜すれば元がとれる」<br />　あっさりとそういう彼にサーシャは伝えようとしたが、なにも言えなかった。<br />「......」<br />　いずれ彼らも知ることになるだろう。だがそれは生きて帰ってきてからだ。<br /> ]]>
        
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    <title>Episode 1４　:　Evantie and Deinonychus</title>
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    <published>2010-02-14T00:01:18Z</published>
    <updated>2010-02-14T00:06:09Z</updated>

    <summary>　教会をでたところでレオナルドは思わず立ち尽くした。　眼前の墓地に、この敷地内で...</summary>
    <author>
        <name>Sho Ayase</name>
        
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        <![CDATA[　教会をでたところでレオナルドは思わず立ち尽くした。<br />　眼前の墓地に、この敷地内で予想できない人間が立っていたからだ。<br />「ホール......」<br />　唖然としながらレオナルドはその名前を口にした。こちらの声がきこえたかどうかはわからないが、彼はこちらを見てくることなく、眼前の墓に視線を落としている。<br />　彼は持っていた花束を丁寧にそこに置くと、その墓標を眺めている。<br />「ホール！」<br />　レオナルドが再び叫ぶと、そこで始めてこちらに気づいたかのように彼はこちらを見てきた。<br />「ああ、お前か」<br />「ああ、じゃねえよ！　なんでここにいんだよ！」<br />「墓参りさ」<br />　彼はそういうと煙草を取り出して口にくわえて火をつけた。なんでもないようなその態度にレオナルドは思わずかっときて彼に殴りかかる体制をつくる。<br />　半ば早足で彼のもとににじりより、さっきより大きな声で叫びつける。<br />「サリーとカテリーナを殺したくせに！」<br />「誤解」<br />　煙を吐き出して小さく小馬鹿にするように息をしてくると彼はそう言った。<br />「カテリーナは自爆だ。お前もみただろう」<br />「内通者はお前だろうが！　ニステルだって同じなんだぞ！」<br />　こちらのその科白に彼はやや迷惑げに吐き捨ててきた。<br />「実力が無かっただけだろう」<br />　その言葉にレオナルドは返す言葉を失う。ぐっと喉まででかかった言葉を飲み込み、拳を作った。そのこちらの様子をみて彼が目を細める。パイロットとはいえ彼とレオナルドの体格の差は歴然で、彼のほうが身長もレオナルドより二十センチほど高い。<br />　空の戦いは命をかけた戦いなのだ。<br />　<br />『そういう問題じゃない！』<br />『この人殺しめ！』<br /><br />　そんな言い訳は通用しない。空で相手を撃墜する、それは人を殺すということと同義なのだから。それをいちいち気にする方がおかしい。<br />　だからそんなことはいまさら仕方が無い。それはレオナルドもわかっていた。<br />　こちらを半ば馬鹿にする視線を向けながらホールは言ってきた。<br />「殴ってみろ」<br />　そして続けてくる。<br />「だが殺すなら空だ」<br />　生かさない、ということを言っているのだ。<br />　誰かの科白を思い出す。<br />　と。<br />「それはあたしの科白」<br />　横から澄んだ女性の声が聞こえてくる。<br />「お久しぶり。エバンテ」<br />　さらに思いがけない人物が立っていることにレオナルドは言葉を失う。彼女は持っている煙草に火をつけながらこちらを見てくるとにやりと笑ってみせてきた。<br />　唖然としながらそちらをみやる。<br />「あ......」<br />「レオナルド・カー少尉。連れ戻しにきたよ」<br />　紫煙を吐きながらそこに立っていたのはアザミ・クエンフィールド少尉だった。最後に会ったのがだいぶ前だった気がする。髪が少し伸びたか、その程度だ。<br />　それに対してホールの台詞も素っ気ない。<br />「ちょうどよかった。手間が省けるな」<br />「何？」<br />「殺す手間、ってことでしょ。よくいうわ」<br />　煙草を投げ捨てながらアザミは素の台詞を鼻で笑ってきた。<br />「あんた何したか自分でわかってんの？　エバンテ」<br />「地上にいるときにその名前で呼ばれるのは気に食わないな」<br />　そういうとホールは煙草を携帯灰皿に押し付けて消した。墓標に踵を返すと倉庫に向かう道を歩き出す。その彼に対してアザミは穏やかではない。<br />「とりあえず、出て行ってくれる？　顔みたくない」<br />「いわれなくとも」<br />　同感だ、とレオナルドは思った。そう短く返すとホールはあっさりと歩き出した。そして途中アザミの横を通りすがるときに呟くような声で恫喝してきた。<br />「次はないぞ」<br />「それはあんただ」<br />　アザミも負けずに返す。敵意をぶつけながら二人はすれ違う。その瞬間、その二人と自分との差をレオナルドは感じた。巨大な、二人と自分の間に立ちはだかるなにか。<br />　彼がその場を去るまで、アザミは彼の背中を睨みつけていた。それが見えなくなると今度はこちらに視線を移してきた。<br />「帰るよ。レオナルド」<br />「え」<br />「フランクフィールドに、あんたを連れて帰ってこいって」<br />　先ほどの険しさはやや弱まったものの、鋭さを残したその視線は刃物の様にレオナルドを貫いた。<br />「でも、俺」<br />「でも？」<br />「まだ......その......色々と準備がさ」<br />「アホか」<br />　アザミは大きく息をつくとこちらに踵を返した。<br />「そんなんじゃシーナに苦労かけるわけよね」<br />「......シーナ関係ないだろ」<br />　その科白に一瞬動揺しながら叫び返す。だがアザミはこちらの言葉などまったく意に介さない様子でそのまま歩き始めた。レオナルドも急いで彼女の後ろを追いかける。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「そもそも機体も仕上がってないのにどうやって帰るんだ？」<br />「あたし二人乗り戦闘機で来たからそれに乗れば？」<br />「敵に襲われたらどうするんだよ？」<br />「あたしがやるよ。あんたレーダー員やりなよ」<br />　そのとき彼女が浮かべた笑みが示すのは絶対的な自信だった、<br />「信用ならない？　あそう。まあべつにいいけど」<br />「そんなこといわれてもなあ......」<br />　レオナルドは後ろ頭をかきながらアザミとともに工房に戻っていく。といってもアザミが先頭を歩き、レオナルドはその後ろをついていっているだけだったが。<br />　道を歩いていくと建物の後ろで聞き慣れた轟音が鳴り響いた。おそらくホールが飛び立ったのだろうと予想をつける。あちらにはいったことなかったので知らなかったが、どうやら工房越しの向こう側は滑走路になっているようだった。<br />「行ったみたいね」<br />　エンジンの轟音と共に飛び立って行く彼の機体を睨みつけながらアザミは呟いた。<br />「うん」<br />　行ったみたいね。<br />　彼女の口から漏れたその言葉をレオナルドはホールの機体を見つめながら噛み締めた。きっと次に空で会ったら撃墜する気で眺めているのだろう。<br />　彼がここにいた本当の理由は知る由もないが、次に遭遇するときは確かに命を奪い合う時というのは間違いないだろう。この近辺を彼が縄張りにしているとしたらその可能性は非常に高い。<br />　茫洋と空を眺めていると、アザミが突然近寄ってきてこちらの胸に手をのばしてきた。<br />「わ」<br />　そしてそこにかけていたレオナルドのドッグタグを取り上げた。そしてそれを自分のポケットに入れるとそのまま踵を返して歩き出す。<br />　その突然の所為にレオナルドは思わず声をあげた。<br />「おい！」<br />「明日まで待つわ」<br />　彼女はそういってくると新しい煙草を取り出してそれを銜えて火をつけた。<br />　煙を吐き出しながら鋭い目つきでこちらを睨んでくる。<br />「それまでに準備できなかったら、サーシャには死んだって伝える。カー少尉は死亡したってね」<br />「なっ......！　そんな勝手すぎるだろ！」<br />「だったらさっさと準備すませてきなさいな。女々しいこと言ってないでさ」<br />　そういうとアザミは煙を再び吐き出しながら颯爽と歩き去った。あんまりすぎるその対応に、その後ろ姿を追いかけることはレオナルドにはもうできなかった。<br />　明日まで？　エバンテが飛んでいるかもしれない空域を、エアプロの領域を、とことん自分勝手なパイロットと共に飛ぶなんて出来るはずもない。<br />「おい待てよ！　アザミ！」<br />　だがこちらの呼びかけなどもう知らないとでもいうように、アザミは工房の中に入っていってしまった。呆然と立ち尽くすレオナルドに、さらに追い打ちをかけるように後ろから声がかかる。<br />「ねえ、レオナルド」<br />　エミリーだ。そちらを振り返るといつの間にいたものか煙草の吸い殻を持った彼女が協会の入り口に立っていた。<br />「ここ、ポイ捨て禁止なんだけど」<br />　アザミが捨てたものだ。<br />　レオナルドは急に頭痛を感じた気がして、額を押さえた。<br /><br /> ]]>
        
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    <title>Episode 13 : Tag</title>
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    <id>tag:srockstyle.com,2010:/azami//5.321</id>

    <published>2010-02-07T00:15:22Z</published>
    <updated>2010-02-07T00:16:42Z</updated>

    <summary>　渡された書類に目を通しながら彼女は目を細めてこちらを見てきた。「レオナルドを連...</summary>
    <author>
        <name>Sho Ayase</name>
        
    </author>
    
        <category term="leonard" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
    
    <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://srockstyle.com/azami/">
        <![CDATA[<br />　渡された書類に目を通しながら彼女は目を細めてこちらを見てきた。<br />「レオナルドを連れ戻せ？」<br />　アザミの態度は相変わらずだったがそれはどうしようもない。サーシャも半ば諦めていた。顔なじみでなければ殴ってやるところだろうが恐らくそれでも物怖じしないだろう。<br />「自分で帰還させれば？」<br />「そうもいかないの。わかってるでしょう？」<br />　半ばあきれ気味にサーシャはデスクに書類を放り投げた。<br />「でなければあなたが呼ばれると思う？」<br />　そういってアザミの目を見返す。彼女はこちらをみてくると、頭を振って笑ってみせてきた。<br />「どうすれば？」<br />「行って、彼を連れ戻しなさい」<br />「同じような任務ばっかり」<br />　彼女はそういうと書類を手元のファイルにおさめた。そして外を眺めた。<br />「まあ、誰もできない同じような任務だからあたしに回ってくるんだろうけれど」<br />「わかっているなら素直に拝命しなさい。いい？」<br />　サーシャの言葉にアザミは立ち上がって敬礼してきた。<br />「拝命します」<br />　これがミラー相手ならいくらか違うのだろうに。<br />　そして彼がいればよかったのに、とサーシャは思った。<br /><br />　<br /><br />　LEONARDO -- Dark Horse<br />　013<br />　<br />　<br />　<br /><br />　ループして相手をやり過ごす。機銃を放つが傷が浅い。<br />　敵機が<br />　速度はこちらが早い。ハイ・ヨーヨー。<br />　だが相手はそこで急旋回。ストールターン。<br />　レオナルドの機体をあっさりやり過ごすと後ろに回った。<br />　振り向く。<br />　遅い。<br /><br />　「訓練」のあと、レオナルドは必ずアビーの墓に立ち寄っていた。<br />　アビーも同じことをやったのだろうか。<br />　レオナルドと同じように。<br />　それともなにもできないまま死んでしまったのだろうか。<br />　彼のこと、サリーのこと。<br />　二人のことを考えると、レオナルドはプログラム内での戦いとはいえ、エバンテと直接対決することができずにいた。<br />　それは自分の弱さなのか。<br />　よくわからない。だがそこにあるのは絶対的ななにか。<br />　自分を終わらせるなにか。<br />　それにあらがう自分だった。<br />　アビー、君は。<br />　彼の名前を墓碑の前で口にする。<br />　彼がどう思いどう戦いどう沈んだのか、レオナルドは知る由もない。<br />　そして、そこに本当に遺体が埋まっているかどうかも知らない。<br />　そして......<br />「どうしてそこにいるの？」<br />　背中に声がかかる。特徴的な高い声。振り向かずとも相手が誰かすぐにわかった。<br />　エミリーだ。<br />「......別に」<br />　小さく答える。理由がみつからない。相手からきつい問いをされるまえにレオナルドは続けて口を開いた。<br />「アビーの持ち物は残ってる？」<br />「どうして？」<br />「......渡さなきゃならない人がいるから」<br />　シーナの顔を思い浮かべる。彼女にはせめて伝えなくてはならないだろう。<br />　二人の間に沈黙が訪れる。その間に空をみながらレオナルドは息を吸った。後ろに立っているエミリーの表情はうかがえない。もしかしたらそれは彼女が判断することでもないのかもしれない。沈黙が逡巡なのか軽蔑なのかは分からなかった。<br />　こちらの心が痛みを訴え始めたころ、彼女は口を開いてきた。<br />「ついてきて」<br /><br />　案内されたのは隣に立っている小さな教会だった。壁は白塗りで、高さは三階建ての家程度。それでも形はしっかりと教会の形をしていて、まわりには花々が植えられている。<br />　エミリーに続いて歩いていくと、奥には正方形の引出しが大量に設置された壁があった。彼女はそのなかからひとつを選び出すと、それを引出してこちらとの間に置いた。<br />「ドクには内緒ね」<br />　頷くと彼女は続けてきた。<br />「ドクは仕事なの。これ」<br />「なにが？」<br />「ここらへんにおちたパイロットを生かして帰す」<br />　ああ、と頷く。<br />　ほとんど無法地帯となっているこの一体から帰るためには誰かの力がいる。ましてや機体を失ったパイロットが一人で帰還するのは不可能だ。<br />　となれば誰かの力がいる。機体を直すメカニックであったり、怪我を直すドクターであったり。<br />　だからドクなのだ。<br />　空軍に所属しているかどうかはわからない。フリーかもしれない。それでも彼はパイロットたちをひきとり、機体をなおし、鍛えなおして再び送り出すわけだ。<br />　唖然としながらレオナルドはエミリーに尋ねた。<br />「それは、何人......？」<br />「いままで十一人。あたしの知ってる限りは」<br />　突然エミリーが口を開く。<br />「知ってる？　ここのエリアは入るより出るほうが難しいの。パイロットにとって。たくさんの対空砲と、エバンテ、エアプロのパイロット。やつらがどうしてそうしているのかどうかはわからないけど」<br />「出るほうが」<br />　エミリーは頷くと再び引出しを見上げた。<br />「十人は死んだわ。十一人目は、君」<br />　こちらに視線をもどしてくる。<br />「アビーの遺物持っていくなら、生きて帰って」<br />　無表情だった彼女の目に始めて表情らしい表情が浮かんだ。<br />「そしてあたしも、生きて帰したい。せめて任期中に一人だけでもね。ここにいるのが空軍の任期なのかドクの気まぐれなのかはわからない。あたしが大人になれるまでにいられるのかもわからないもの」<br />　そういうと彼女は取り出したアビーの引出しの中に手を入れて、ドックタグを取り出してきた。黒く縁取られたそれには『LAF』の文字と共に彼の名前と、タックネームが書かれている。<br />「これでいい？　アビーの」<br />　レオナルドはうなずくとそれを慎重に受け取った。軽く血と土がこびりついたそれは彼の魂が宿っているようで、今にも何かが浮かび上がってきそうだった。それをポケットにしまうとレオナルドは自分の目元を押さえた。<br />「必ず生きて帰るよ」<br />　それに彼女はうなずいてくるとアビーの引き出しを再び元の位置に戻した。そしてそっと立ち上がるとこちらの横を通り過ぎ、協会から出て行った。<br />　エミリーがいなくなった後も、レオナルドはしばらくそこに立ちすくんでいた。<br />　ポケットの中でアビーのそれを握りしめながら。<br /><br />　＋＋＋＋<br /><br />　一機の戦闘機が山を超える。<br />　山間すれすれを時速九百キロを超えるスピードで対空砲の追撃をかわし、無法地帯となっているエリアへ突っ込んでいく。<br />　それを狙うミサイルは撃墜され、対空砲はかわされ、攻撃箇所はピンポイントに爆破し、その戦闘機はたった一機でその境界線を突破した。<br />　レーダーをみながらドクは口笛を吹いた。さすがとしか言いようがない。ポットからコーヒーをいれながら息をつくとちょうどそのパイロットから通信が入ってきた。<br />『あと一分で到着するけど』<br />　カップに口をつけながらドクはかわらない彼女の態度とその腕前に感嘆した。<br />「いい兆候だ。出るときもうまくいけばいいんだがね」<br />『バカにしてる？』<br />「まさか。滑走路開くからそこに着地してくれ。サーカス飛行は控えてくれよ」<br />『どうかしら』<br /><br />　その戦闘機は到着すると鋭い風があたりを巻き込むように吹いた。<br />「さすが最新鋭だねえ。いじりがいがありそうなんだけど」<br />「だけど？」<br />「いや、パイロットがお前じゃ機体も損傷なんかありゃしないかってさ」<br />　ドクはそういうとおりてきたパイロットをみた。<br />「久しぶりだな。アザミ。三年ぶりか？　変わってないな？　髪が伸びたくらい？」<br />「ショートカット好きじゃないの。残念」<br />　アザミはそういうとヘルメットを小脇に抱えて歩いてきた。そしてあたりを見回しながら煙草を銜え火をつけると、<br />「レオナルドのバカガキはどこ？」<br />　といってきた。<br />　こちらも変わらないその態度に失笑する。<br />「先客もいるぜ」<br />「誰？」<br />　その問いに一間置くと、ドクは渋面を作った。<br />「多分......お前が一番いけ好かない奴だ」<br />　とだけ言った。<br />]]>
        
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    <title>Episode 12 : I think...</title>
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    <published>2010-01-31T00:32:34Z</published>
    <updated>2010-02-07T00:12:44Z</updated>

    <summary>　そこにあるのは絶望だけかもしれないのに。　一体何をしたいのだろう。　　LEON...</summary>
    <author>
        <name>Sho Ayase</name>
        
    </author>
    
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        <![CDATA[<br />　そこにあるのは絶望だけかもしれないのに。<br />　一体何をしたいのだろう。<br /><br /><br /><br /><br />　<br /><br />　LEONARDO -- Dark Horse<br />　012<br />　<br />　<br />　<br /><br />　その中を覗くと機体のコックピットが浴槽に浮かぶような形で存在しており、水に浮かぶようにゆらゆらと揺れていた。中にはレーダー機器と操縦桿、スロットルがあり、眼前には大きなディスプレイ。<br />　確かに機体だがどこかレオナルドが使っていたものとは違う。<br />「マニュアルある？　引き継ぎとか」<br />　そばにあったテーブルに道具類を置きながらレオナルドはドクに尋ねた。<br />「お前はマニュアルがないと空飛べないのか？」<br />　その問いにドクはあからさまな不快そうな顔をしてみせてきた。さらに、<br />「マニュアルなんてなくても飛べるんじゃねーの？」<br />「無理無理」<br />　首を振って否定すると、レオナルドはフライトスーツに腕を通した。マスクや器具を準備しながらふと荷物が少ないことに気がついた。<br />「あのさ」<br />「乗ってみればわかる」<br />　ゆっくりとした発音でにべもなく彼はそういってくる。は反論の余地もない。<br />　仕方なくその浴槽のような四角い入れ物を見つめる。相変わらずコックピットが水に浮いているように見える。キャノピィが開いたままになっていて、その中にいつも見る操縦席がある。<br />　半ば無理やりに身体を押し込みつつその中に乗り込むと前を見る。操縦桿を握って前を見据える。<br />「キャノピィを閉じな」<br />　ドクのその言葉に従ってキャノピィを閉じる。ガラス越しに暗闇と部屋の明かりだけが見えた。が、それも閉じられる。<br />　やがて薄い機械音とともに乗っている機体が移動するのが分かった。さすがに知らない機体で撃墜された空域をテスト飛行とはいえ離陸するのは気が引けたが、やれといわれている以上やるしかない。<br />　マスクをはめると前に向き直る。スロットルと操縦桿を握り締めて息をつく。<br />　やがて揺れがとまると、前方のシャッターが開き始めた。四角い出口があり、海と空が見える。<br />「ドク、ここでエンジンふかして大丈夫なの？」<br />　尋ねると無線からドクの声が返ってくる。<br />『ああ。いつも通りやれ』<br />　手を降ってから親指を立てて見せる。スロットルを押し上げてエンジンを入れる。<br />　リヒート。<br />　機体が前身する感覚。<br />　目の前にはいままで窓越しで見ていた風景。<br />　飛べることに特別な快感は抱くわけではないが、ここでやらなければ戻れない。<br />　カタパルトが外される音とともに機体が大きく前進する。ピッチアップ。<br />　テイクオフと同時にレオナルドは腕に力を込めた。<br />　飛べる。<br />　まだ飛べる。<br />『高度15000まで上昇しろ』<br />　ドクの声。地面がぐんぐん遠くなっていく。それにならうように操縦桿を引いた。リフト・アップ。<br />　高度が上がっていくのは気分がよかった。まるで色々、ごちゃごちゃした感情を後ろに置いていけるようで気分が良かった。<br />　雲を突き抜ける。<br />『ターンだ』<br />　右に操縦桿を切る。機体がロールしてカーブ。<br />　順調だ。まだ忘れてない。<br />　と。<br />　斜め前に敵機を見つける。<br />　三機。<br />「ドク！　敵機発見！　三機！」<br />『撃墜しな』<br />　簡単に言う。そもそも多勢に無勢、よほどのエースでも無い限りは複数機を一人で落とすのは簡単ではない。大規模な戦闘を除いて複数を撃墜するというのは難しいのだ。<br />　だがこの場面になってしまった以上やるしかない。<br />　120度ロールのあと高度を落としながら敵機と近づく。<br />　速度は8000を超えた。腹を擦り合うようにして敵機三機と交錯する。雲を切るようにその姿を目視確認。<br />　さらにロールしてスプリットS。<br />　円形を描くように二機がこちらの後ろについてきた。<br />　ロールして円を描きながら海面すれすれまで高度までさげる。<br />　翼で切られた風で水が大きく瞬く。<br />　機銃が発射されてくる。右。<br />　次は左だ。バレルロール。<br />　大きく円を描きながら後ろをやり過ごそうとするが相手はこちらからひっついて離れない。<br />　レオナルドは操縦桿を大きく後ろに引いた。<br />　ピッチアップ。一気に急上昇。&nbsp;&nbsp; &nbsp;<br />　エンジンの出力を落としつつ操縦桿を倒しサイドスリップ。敵機との距離が近くなったところで操縦桿を操縦桿を一気に倒してクルピット。<br />　敵機が眼前を移動していく。パイロットの顔は見えない。<br />　これでも自分はフランクフィールドの基地のパイロットなのだ。負けてなんかいられるものか。<br />　レオナルドは機銃のスイッチをあげると眼前の敵機目掛けて放った。左翼が吹き飛んだ敵機がバランスを崩して海に突っ込んでいく。水面に機体をこすりつけながら水面に沈んでいく。<br />　レーダーを再び確認すると残り二機はこちらの後ろにまだいる。平行状態にロールし直しインメルマンターン。そのまま横に敵機が突っ切っていくのがみえたのでそのまま速度をあげる。<br />　距離はわずかだ。だが敵機のほうが速度が早い。<br />　ロー・ヨーヨー。高度を稼いでから急旋回。<br />　後ろにつくとミサイルロック。レーダに捉えると同時に放つ。<br />　敵機の翼が爆発する。操縦桿を切って一気に離脱。そのままロールしながら高度をあげていく。<br />　最後の敵が目視できた。すれ違いざまに相手の機体を確認する。<br />　素の瞬間、レオナルドは目を見開いた。<br />　エバンティクスのマーク。<br />　機体の横にそれが描かれていた。思わず喉を鳴らす。<br />　エバンテ？<br />　エバンテなのか？<br />　ドクに伝えるべきか。<br />　レオナルドは息をつくと操縦桿を強く握り締めた。相手がこちらの後ろについてくる。<br />　エルロンロール。操縦桿を切って離脱。だが相手もそれに追随してきた。<br />「ドク、相手が......」<br />『撃墜しろ、っつわなかったか？』<br />　確かにその通りだ。でも。<br />　相手は後ろについてきた。操縦桿を切ってシザーズ。レオナルドは自分の歯が鳴っていることに気づいた。<br />　興奮ではない。怖いのだ。<br />　息が荒くなる。海の上で散ったサリーのことを思い出す。<br />（駄目だ、駄目だ）<br />　考えたら、駄目だ。<br />　ごくりと唾を飲み込むと、レオナルドは一気に操縦桿を押し倒した。<br />　離脱を選択する。<br />　できるだけ離れる。スロットルを押し上げるとリヒート。マッハの領域まで押し込む。時速1300km。<br />『ゲームオーバーだな。レオナルド』<br />　その無線に思わず体を震わせる。ドクの声だった。<br />　その瞬間機体の揺れがとまり、キャノピィに映っていた景色が暗く変わった。レーダーが暗くなりすべての計測器が止まる。<br />　思わず操縦桿から手を離す。機体が上にあがっていく感覚と同時に頭上が開き、明るくなる。キャノピィが自動的に開いてレオナルドを光の中に飲み込んだ。<br />「やれやれ、まだ無理か」<br />　ドクが立っていた。<br />「今のはエバンテをラストボスに設定した戦闘機の訓練シミュレーションだ。俺が作った装置に乗ったパイロットをドッグファイトと同じ状態にし、戦闘時の訓練をする」<br />「......」<br />「エバンテは無理か」<br />「......ドク」<br />「理解できてないか。しかたない。ほら出ろ。一人で出れないか？」<br />　手が差し出される。それを握ってなんとか浴槽の外に抜け出る。膝に力が入らず思わず地面にへたりこんだ。<br />「エバンテは見つかったら逃げられない。見つかったら殺される。そしてここら辺はヤツのエリアっていってもいい」<br />「......無理だ」<br />「無理だつってたらなんもならんよ。レオナルド君。疲れたか？　水は？」<br />　ペットボトルの水を差し出される。<br />　レオナルドは呆然とそれを見つめた。<br />「いや、いい」<br />　ふらりと立ち上がる。唖然としたまま扉へと向かう。<br />　ドクは後ろから止めてこようとはしなかった。<br />　<br />　自分が見つめていたのは現実なのかもしれない。<br />　どうしようもない現実。<br />　<br />　外に出ると晴天だった。それはとても憎いくらい。<br />　何も気にせず飛べるのなら最高だろうなあ、と思いながら石畳の上を歩いていく。煙草を取り出そうとして、二階にすべて置いてきてしまったことに気づいた。小さく嘆息しながらなににともなく右の方をみると、先日エミリーと外に出たときにみた墓地が見えた。<br />　なににともなくそちらに歩いていく。興味があったから、というわけでもない。<br />　そこは石碑がひたすら立っている本物の墓地だった。上部に名前が描いてある。石碑が均等に並んでいる。<br />　それらを眺めながらレオナルドは息をつく。誰の名前かはわからない。<br />　石碑の前にはエミリーが手入れしているのか花々が置いてある。<br />　その中にひとつ、見知った名前があった。<br />　いや、実際は会ったわけではない。<br />　<br />　アビー・アンダーソン。<br />　<br />　レオナルドは思わず息をのんだ。その石碑に近づいて呆然とそれを見つめる。<br />「アビーのことを？」<br />　後ろから声をかけられる。視線だけで振り向くとドクが立っていた。<br />「......」<br />「ここにきたんだよ。こいつも。治療、間に合わなくて」<br />「死んだんだ」<br />　小さく呟く。その事実を飲み込むようにレオナルドは息をついた。<br />「俺、アビーのこと、生きていてほしいって思ってなかったんだ」<br />　膝を落とす。<br />「今、なんか、安心しちゃって、それは」<br />「最低？　って言ってほしいのか。お前」<br />　ドクがこちらの肩に手をかけてくる。<br />「ま、気にすんな。どうせお前がどう思おうとそいつが死んだことに変わりはないんだから。ほれ、いくぞ」<br />「俺、もうちょっとここにいます」<br />　そのとき彼がどういう目でこちらをみていたかはわからない。ただ、<br />「そうか」<br />　と言ってくれたその声音は優しいものに聞こえた。<br /><br />　自然と、レオナルドの目からは涙がこぼれた。<br />　なぜか、会ったこともないパイロットなのに。<br /><br /> ]]>
        
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    <title>Episode 11　:　Ace arrived</title>
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    <published>2010-01-17T01:15:11Z</published>
    <updated>2010-01-17T01:18:07Z</updated>

    <summary>　書類をまとめていると、不意に電話がなった。キーボードに文字を打ち込んだ後着信元...</summary>
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        <name>Sho Ayase</name>
        
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        <category term="leonard" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
    
    <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://srockstyle.com/azami/">
        <![CDATA[　書類をまとめていると、不意に電話がなった。キーボードに文字を打ち込んだ後着信元を見る。<br />　軽くため息をつきながらそれにでた。<br />「オペレイター？」<br />「フレミングだけど」<br />　思わずめまいを感じながら小さく頷いた。<br />「ええ。お久しぶりです」<br />「二人からの報告は？」<br />「ありません。大河をこえてからが最後です」<br />「そう。でもライアンからあったんだろ？」<br />「ええ」<br />「なんて言ってた？」<br />　決してくらい声ではない。まるでこちらを攻める気がないかのように。解決策を淡々と練っていながらその奥で考えていることをまったく悟らせない。<br />　一息ついてから、続けた。<br />「一人だけ、預かっていると」<br />「じゃあもう一人は撃墜されたのかな」<br />「今の時点では確証はありません。民間の施設に保護されているかも」<br />「あそこはほとんどがエアプロのフロント企業や子会社で成り立っているはずだよ。空軍のパイロットを匿ってくれる場所なんてないだろう」<br />「ですが......」<br />「二人の機体は行方不明なんだ。いい？」<br />　黙り込んだ。どうすることもできない。しかしこれ以上あの場所だけに集中して部下を死なせるのでは通常の任務が生半可になる。<br />「次長。しかし」<br />「落ち着きなよ」<br />「落ち着いてます」<br />「いいかいサーシャ。僕は彼らを行方不明にはするといったが、捜索しないとは言ってないよ。機密扱いになるから、この件については君の手から離すことにしよう。そしてこちらから任務にあたるパイロットを送る。君は通常業務に戻ると同時に、そのパイロットのサポートをよろしくね」<br />　その言葉を聞いて思わず目を閉じる。喉をならしながら嫌な予感を飲み込む。<br />「次長。まさか」<br />「まあまあ、任せておいて」<br />　そういう彼の声はひどく軽い。<br />　それは心強いときもあれば、どう反応するべきかわからなくなることも多かった。<br /><br /><br /><br /><br />　<br /><br />　LEONARDO -- Dark Horse<br />　011<br />　<br />　<br />　<br /><br /><br /><br /><br /><br />　気づけば、レオナルドがここに保護されてから二週間が立っていた。<br />　時が過ぎるのはあっという間だ。<br />　<br />　とはいえ、レオナルドはなにか特別なことをしていたわけではない。手近にある本棚に重なっている本を読むか、絵を書くか、足が使えないので部屋の中を無闇に歩き回ることもできない。食事はエミリーが運んできてくれるし、生活に必要な施設も大抵二階にそろっていた。それに必要になればエミリーが持ってきてくれることもあったから生活には困ることはない。<br />　レオナルドの左足はだいぶ治ってきていて、ギブスも簡単なものになってきた。松葉杖があれば大抵のところに行けるくらいにはなってきている。<br />　それがうれしかった。機体がどうなっているのか知る由もないが、もうすぐ戻ることができる。とりあえず一人で息苦しい場所にいることとはおさらばだ。<br />　ふと、サリーのことを思い出す。<br />　数週間がたったとはいえ、彼女のことを考えると胸が締め付けられるように痛んだ。あれは明らかに自分の過失だ。それをかばう形で彼女は海へ消えたのだ。<br />　どちらにしてもどうやって彼女の婚約者に話すべきだろう。そもそもその相手を自分は知らない。そんなことを考えるとますます憂鬱になってくる。<br />　息をつくと松葉杖をついた。そして前に進む。ある程度体重をかけても痛みが走らないのはやはりある程度治ってきた証拠だろう。それがすこしうれしくなる。しばらく歩いて、体重をかけても大丈夫そうだったので松葉杖なしで歩いてみたが、問題なさそうだった。<br />　だが今がちがちに固められているのでとりあえず杖を使う。廊下を歩いた。どこにいくというわけでもなく、ただ。<br />　床がきしむ音と自分が前に進む足音が聞こえてくる。階段の隣まできてレオナルドはその下をふとみた。<br />　と。<br />「よお。治ったか」<br />　ドク。<br />「二週間ぶりかな。エミリーはちゃんと交換してくれてたか？」<br />「ええ」<br />「そりゃよかった。お前の機体も治ってるからこいよ」<br />　ぴたり、と動きをとめる。<br />「え？」<br />「試験しないと飛べないだろ。お前も、機体も。テストするから来い」<br />　それだけをいうとドクは下に降りていった。呆然とその背中をみながらレオナルドは自分の胸が鳴るのを感じた。<br />　それは歓喜からくるものではない。きっと初めて乗せてもらえたときのような興奮があるわけではない。今更それがよみがえるわけでもない。<br />　そこで浮かんできた感情は強烈な不安だった。<br />　膨らんだそれが緊張を呼び、すぐに胸を一杯に満たした。<br />（なんだ？）<br />　頭に疑問符を浮かべながらレオナルドはそこに立ち尽くした。<br /><br /><br />　とりあえず準備らしい準備もすることができなかったのでその服のまま下に降りていくとエミリーが階下に立って待っていた。<br />「やあ」<br />「お疲れ。テストがんばってね」<br />　それに向かってうなずく。そのこちらに対してどうというわけでもなく彼女は淡々とした表情でこちらを見上げてくると。窓の外を背中越しに指差しながら無表情で伝えてきた。<br />「案内するからついてきて」<br />　それだけをいうとこちらに踵を返した。置いていかれないようについていく。<br />　その後ろをしばらくついていくうちに、レオナルドは彼女の歩く速度が自分より早いことに気がついた。しいていうならば遠慮がない。いつも通りといった様子だ。<br />　さすがに置いていかれるのは心もとないので彼女の背中に声をかけた。<br />「待ってくれよ。早いよ」<br />　するとエミリーはこちらを振り向いてきてーー半ば睨みつけるように、レオナルドの顔を見返してきた。<br />「病弱きどってんじゃないわよ」<br />「そんなこといわれても」<br />　頭上から巨大ななにかに押しつぶされるような感覚に陥りながら、レオナルドは彼女にそれだけを返した。足を指差して早く歩けないことを告げると、エミリーは鼻で笑いながらそれをあしらってきた。<br />「それ、全快してるわよ」<br />「マジで？」<br />「そう。だからドクもテストしようとしてたんじゃない」<br />　あっさり彼女は言ってくる。それに困惑しながらレオナルドは口を開いた。<br />「なんであんな時間かかるっていったんだよ！」<br />「ドクがね、そういえって」<br />「なんでだよ」<br />「さあ......？」<br />　それだけを言ってくると彼女は再び前をむいて歩き始めた。レオナルドは今度は松葉杖ではなく両足に体重を乗せるようにして歩いてみた。杖でわずかに軽くしながらだいぶ歩けるようだった。<br />　気づけば彼女はとある扉の前で立って待っていた。廊下はずっと一本道だったから迷うこともなく、扉まで行き着くことができた。<br />　こちらが隣までくるのを待ってから、エミリーはいつも通り平坦な口調で言ってきた。<br />「ドクがいるわ。中にはいったら、それ外してもらって」<br />「あのさ」<br />「なに？」<br />　迷惑そうな顔でこちらをみてくる。表情が無表情か気難しい顔しかしないので不機嫌なのかと勘違いしてしまう。<br />「なんか俺、悪いことしたかな？」<br />　その科白に彼女の表情が変わる。それは注意しないと気づかない程わずかな変化だったが、その視線に侮蔑の光が含まれていることレオナルドは気づいた。<br />　その口がすこし開いて小さく伝えてくる。<br />「別になにも」<br />　そういって彼女は踵を返し、廊下を歩いていってしまう。その背中をしばらく見つめた後、そのままでいるわけにもいかないのでとりあえずレオナルドは扉を開いて中に入った。<br />　そこは様々な工具や道具、装置がびっしりと並んでいた。回線でつながれたコンピュータがラックに入れられて並んでおり、その奥の机につなぎ姿で彼は座っていた。<br />　薄汚れた姿だがそれは機械油や煤だ。設計をするなら図も書かなければならない。メカニックは大変だな、とつくづく思う。<br />　その背中を眺めていると、彼はこちらを振り向かずに言ってきた。<br />「そこに座っててくれ。すぐ終わるから」<br />　どこに、と聞き返そうかと思ったが余計なことをいうとまた怒られそうなのでやめた。そもそも座るところが、という以前に足の踏み場がない。<br />　しばらくしてから彼はこちらを振り向いてくると、片手に救急箱を持ちながら近寄ってきた。<br />「お待たせ。足は不便か？」<br />　がちがちにかためられたそれをみる。レオナルドは小さく頭を振った。<br />「いらないなら外してよ」<br />「そうだな」<br />　あっさり手を伸ばしてそれを外してくると、ドクは手を招いてきた。<br />「こっちだ」<br />　彼が案内してきたのは部屋のさらに奥にある扉だった。そこに行くとドクは扉を開き、レオナルドを中に招き入れた。自身も体を入れると扉を閉める。<br />　そこは四方が四メートル程度ある正方形の壁に囲まれた真四角の空間で、部屋の端には縦に長い大きなユニットバスのような長方形の穴があった。壁と天井は白く塗りつぶされており、床は黒いラインが入った四角模様になっている。<br />　ドクはドアの隣にある机にラップトップを置くと、その脇にあるスイッチをあげた。そして呆然としているレオナルドを尻目に、取り出した箱を渡してきた。<br />「着替えな。フライト準備」<br />「え？」<br />「だから、飛ぶときの準備」<br />　わずかに眉をひそめながら、だがその口は笑っている。<br />「まさか二週間やそこらで忘れたとはいわせねえぜ？　少尉？」<br />　どこか恐ろしい笑みにそれは見えた。あえて例えるなら、そう。<br />　小さく頷く。<br />「そんなわけないじゃん」<br />　急いでその箱をあける。フライトスーツとジャケット。マスク、ヘルメット、自分のライセンス等墜落したときになくしたものがすべて入っていた。<br />　その中身をみて動きを止める。だが、すぐにドクが背中を押してきた。<br />「向こうの部屋で着替えてこい。すぐに始めるぞ」<br />　あのとき無くしたものがものだけ、であったならどれだけ楽だろうか。<br />　そのことにレオナルドが気づかされるのにそれほど時間はかからなかった。<br /><br />　＋＋＋＋<br /><br />　同じ頃。フランクフィールド基地。<br />　連絡を受けたサーシャは管制塔まであがってきていた。<br />「レイン？　いる？」<br />「はいはい。いますよ。大佐」　<br />　そこで様々なレーダー機器を扱っていた管制官ーーレインは管制塔にあがってきたサーシャを見上げていつも通りのへらっとした笑いをしてきた。スコットと同期の女性管制官だ。短い黒髪でレーダー室で平気で喫煙するような女性だが、すこぶる腕はいい。<br />「うち以外のそのパイロットから連絡はきた？」<br />「ええ。もうすこしだそうです」<br />　そう答えてくる。それにたいしてうなずきながらサーシャは彼女に対して買ってきた缶コーヒーを渡してやる。<br />「あれ？　いいんですか」<br />「ええ。たまにはね」<br />「ありがとうございまーす。いただきます！」<br />　うれしそうにそういうとレインは缶をあけて口に含んだ。<br />　と、その瞬間。<br />　管制塔の脇すれすれを漆黒の機体が通り過ぎていく。<br />　もうすこしで激突するのではないかというくらいの距離である。衝撃で窓ガラスがびりびりと振動し、吹き付けた強烈な空気の波が管制塔を揺らした。<br />　それから遅れてジェットエンジンの爆音が二人の耳をつんざく。<br />「げぼっ！」<br />　ちょうどコーヒーを口に含んでいたレインが轟音に驚いたのか思い切りそれを吐き出す。サーシャは耳を押さえたがそれでも近距離で聞くエンジン音はかなり大きく、突然晒されればかなり心臓に悪い。もちろん口に何かを含んでいれば......<br />　コーヒーをだらだらと口からこぼしながら、レインがマイクに向かって怒鳴りつけた。<br />「チッキショー！　この馬鹿野郎！　ちゃんと着陸ルートは守れ！」<br />『ははっ、挨拶挨拶。気にしないでよ』<br />　明るいその声ーーと機体は管制塔を超えた遥か遠くでヨーイングし、そのまま左旋回したあと滑走路に向かってくる。もちろん当初の予定とは全然違う滑走路だ。<br />　その様子を眺めながら、サーシャは大きく息をついた。<br />「またしかし、ずいぶんと厄介なヤツを送り込んできてくれたこと」<br />　そういって部屋のドアに向かう。<br />　後ろではレインがマイクに向かって罵っていた。<br /><br />　管制塔から下に降りると、ちょうどパイロットが機体から降りてきた所だった。サーシャはその相手をみて腰に手をあてて大きく息をついてみせる。<br />「やってくれたわね」<br />　目を細めてこれから説教するとばかりに相手を睨みつける。<br />「他の基地なら減俸ものよ。どうしてくれるの」<br />「あんなの挨拶だよ。悪ふざけしてみたくなっただけ」<br />「何事も限度があるのよ」<br />「知ってるって。ごめんってサーシャ」<br />　相手は少尉で、自分より階級が下だ。にもかかわらず敬語を使わず、何ともないとばかりに答えてくる。<br />　黒い前髪をかきあげるとそのままついでとばかりに敬礼のポーズをとってみせてきた。<br />「アザミ・クエンフィールド少尉、ただいま着任しました」<br />　 ]]>
        
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    <title>Episode 10　:　space</title>
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    <published>2010-01-09T02:27:00Z</published>
    <updated>2010-01-09T02:29:41Z</updated>

    <summary>　スピードをあげる。逃げる。逃げ続ける。　　スロットルを押し上げてエンジンに燃料...</summary>
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        <![CDATA[　スピードをあげる。逃げる。逃げ続ける。<br />　<br />　スロットルを押し上げてエンジンに燃料を流し込む。<br />　上空を覆う雲に向かってピッチアップ。そのまま機種から突っ込む。<br />　ごまかすことができるかもしれない。<br />　ずっと後ろをついてくる敵の飛び方は知っている誰かに似ていた。<br />　それを一瞬振り返る。息が詰まる。<br />　駄目だ。負ける。<br />　ループ。そしてロール。<br />　曲線を描きながら、そして羽先が雲海につかるような場所をすれすれに、機体を九十度ロールさせて一気に飛んだ。<br />「畜生！」<br />　眼下で雲が切れていく。<br />　操縦桿を切る。<br />　スポイラを展開。ピッチダウン。<br />　エレベータアップ。<br />　斜め上ーーー実際には斜め下に高度をさげる。そのままスライスバック。<br />　雲の中で速度をあげる。<br /><br />　駄目だ。<br /><br />　まだ、死にたくない。まだ。<br /><br /><br />　<br />　<br />　<br /><br />　LEONARDO -- Dark Horse<br />　010<br />　<br />　<br />　<br /><br /><br />　次の日。<br />　レオナルドは早速松葉杖を使って歩き始める訓練を始めた。<br />　これ以上寝ていると気が遠くなりそうだったからだ。　<br /><br />　松葉杖で歩くのは骨折中のレオナルドにとって文字通り骨が折れるような作業だったが、なれてしまえばそれほどでもない。生まれつき両足が効かない人々に比べれば自分の今の状態など恵まれているほうだろう。<br />　階段を一段一段降りていくと、階下にエミリーが立っていた。<br />「おはよう。レオナルド君」<br />　思わずびくりとする。予想しなかった、というのもおかしいがレオナルドは彼女がそこに立っていることをほとんど考えていなかった。<br />「なんでここにって？　ドクにね、いわれてたの。あなた今日あたり動いて、降りてくるんじゃないかなって。松葉杖、辛くない？」<br />　一段おりる。確かに両足どちらも治りかけとあって痛みがまだ伝わってくる。<br />　小さくうなずいてみせると、彼女は大きな目をこちらに向けて上目遣いにこちらをみてきた。<br />「じゃあこれに乗って。せっかく降りてこられたんだから、敷地のなか案内するわ。わけわかんない土地の中それで歩くの、不便でしょ？」<br />　最後の段を降りる。横にはエミリーが引っ張ってきた車椅子があった。<br />「これ、電動？」<br />「ううん。人力」<br />「......そういうのって、人力っていうの？」<br />「間違った？　人動のほうがあってるかしら？　あたし車椅子のことよくわからないから。乗ったことある？」<br />　横に首を振る。今まで健康体で、負傷も殆どしたことのないレオナルドにとってそれは初めての体験でもあった。とりあえず彼女に手を貸してもらいながら腰を降ろす。病院などでみたことあるように自分で動かそうとすると、松葉杖を片付けたエミリーがこちらの後ろにまわってきた。<br />　手をあげて声をあげる。<br />「ちょっとまって」<br />「なぁに？」<br />　さも当たり前のようにそちらにやってきた彼女をとめる。<br />「俺、君に押されるの？」<br />「そうよ」<br />「押せる？」<br />「君みたいなピーマンみたいな人だったら大丈夫」<br />「......」<br />　とりあえずなにもいう気がなくなったのでそのまま言葉に甘えることにする。エミリーが苦戦するかと思いきや、なんのこともなくレオナルドが乗った車椅子を押して動かしていく。彼女の顔を少しだけ振り返るが、特に力を入れているわけではなさそうだ。<br />「なに？」<br />「いや、なんでもない」<br />　そういって前をむく。まさか野菜に例えられるといささか傷心であるが。元々飛行機乗りは海軍や陸軍と違って痩せている人間が多く、それほど筋力向上を求められることは少なく、体躯に恵まれている必要性もあまりない。スコットやジャックの様に運動神経に秀でているのはごく一部だ。<br />　滑らかな床の上を車椅子はゆっくりとしたペースで進んでいく。なんだか肩身の狭い思いだったが、しばらくしたら落ち着いてきたのでよしとすることにした。<br />　廊下はまっすぐ続いていて、一定間隔で扉があった。どこにも特に部屋番号が書かれているわけでもなくただ白い壁に黒い扉がはめこんである、といった感じだ。<br />「なんなのここ」<br />「ドクの研究室」<br />　後ろからエミリーがなんのことはないというように答えてくる。廊下の窓から外をみると、そちらは整備された芝生を挟んで大きな倉庫が三つ、並んでおり、そこにまた舗装された道路が続いていた。<br />「どうしたの？」<br />　うしろから彼女が聞いてくる。外を眺めていたレオナルドは彼女に声をかけられたことにしばらく気がつけなかった。<br />「ずいぶん広いね」<br />「元々農場だったから」<br />「農場？」<br />「牛とか豚とか」<br />　それだけをいうと、彼女は言葉を切った。それに小さくうなずきながらレオナルドは再び外に視線をやった。そこにある倉庫は外装は黒く塗られ、扉は固くしまっていた。<br />　そう、それはまさしく......<br />「軍用？」<br />　思わずそうつぶやいてしまう。以前空軍の基地で見かけた倉庫と形が酷似していたからだ。<br />「元はね。牧場の次は飛行機工場。その次は宇宙船とか作ってたみたいだけど」<br />「宇宙船？」<br />「星の周りを飛ぶの」<br />「それはわかるって。宇宙船なんてつくってたんだ」<br />「大昔の話よ。今はドクの研究所。外見たい？」<br />　気づけば廊下の端までやってきていた。廊下は九十度左に回っていて、それに沿うように白い壁と扉が続いている。そしてレオナルドの正面には人が二人分通れる程度の扉があった。<br />　レオナルドがうなずくとエミリーはそれの鍵をあけて、扉を押しあけた。そこにあるのは青空と緑色の芝生、そして石畳の道。<br />　透明な空気だった。<br />「うわぁ」<br />　思わず声に出してしまう。顔にあたる浜風が運んでくるのは潮の香りがする空気だ。<br />　眼前を白い道が通っていて、その脇を芝生がある。それは誰かに手入れされているかのように均等にそろえられていた。<br />「これ、君たちがやってるの？」<br />「ううん。ドクが作った芝生狩りのロボットがやってる。うちは基本なんでも自動化なの」<br />「自動化？」<br />　エミリーはそれには答えずレオナルドの乗った車椅子を押した。小さく乗り上げる音とともに石畳の上を移動していく。<br />　石畳の道は横幅がレオナルドの身長ほどの幅で、人が歩くには十分すぎる広さだった。わずかな段差があるとはいえ車椅子から伝わってくる振動はわずかなものだ。エミリーも難なく押していく。<br />「あそこが倉庫。いろんなものがはいってるの。ドクの所有物とかあるから勝手にはいっちゃだめだよ」<br />「俺の機体は？」<br />「多分あそこじゃないかな。でもドクが許さないから」<br />「権力者なのか。あの人は」<br />　それに対しては彼女は答えなかった。どうとでもよいというように。<br />　そのまま歩いていくと倉庫は黒くそびえ立っているのが見えた。それが三棟。高さは二階建ての研究所兼住居の建物をわずかに超えるくらいで、高さがあるものも収容できるものと見える。壁は不自然と黒く塗りつぶされていて、所々にLAFのロゴマークがはがれ落ちそうな状態で残っていた。<br />　元々は軍の所有物だったのだ。<br />　特に後ろのエミリーはなにをいってくるわけでもなく、こちらの車椅子を押してくる。二人が移動している道は倉庫と研究所の間を通る道でーーといってもその道の脇にはだたっぴろい芝生があったがーーその先はまた芝生がありそして不思議なことに小さな教会が立っていた。<br />　三つ目の倉庫をこえたところでレオナルドはしばらく行った先にある教会に気がついた。<br />「あれは？」<br />「ん、教会、お墓があるの」<br />「お墓？」<br />「死んだ人を埋める場所」<br />　彼女はそういうとしばらく間を置いた。それからくるりと車椅子を回した。レオナルドは不思議に思って彼女の顔を見上げる。<br />「戻りましょ」<br />「あれ？　いかないの？」<br />「あまりみたくないから」<br />　それだけを伝えてくるとエミリーはやや足早で戻り始める。結局はそこをみせたくなかったらしい。もしくはみたくなかっただけか。レオナルドはホラーを信じないので近寄りたいと思ったのは好奇心だろう。まさか死者が地面から飛び出てくるわけもないだろうに。<br />　結局彼女はそれにふれてほしくなさそうだったのでレオナルドもふれないことにした。何も言わないのがよい時もある。<br />　<br />　そう、なにも。<br /><br /> ]]>
        
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    <title>Episode 9　:　Doctor stop</title>
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    <published>2009-12-20T02:44:38Z</published>
    <updated>2009-12-20T02:48:30Z</updated>

    <summary>　どうして戦闘機に乗るのか。　それを尋ねられたときがある。サーシャは尋ねなかった...</summary>
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        <name>Sho Ayase</name>
        
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        <![CDATA[　どうして戦闘機に乗るのか。<br />　それを尋ねられたときがある。サーシャは尋ねなかった。確か尋ねたのは自分を教えた教官だったように思う。彼は飛ぶ理由を見つけておけ、と言っていたはず。その時レオナルドは答えが見つからなくて、かっこいいからともいえず、ただ国を守るためとかありきたりなことをいってしまったように思う。<br />　もともと飛ぶのにパイロットたちが理由をつけるものなんだろうか、と思う。そもそも軍隊にはいったのもやりたいことがなかったからだし、それはカテリーナやサリーも同じ理由だったろう。自分だけに限った話ではないはずだった。<br />　<br />　飛ぶ理由。<br />　<br />　それを見つけられない限り、それで悩む日が必ずくる。　<br />　<br /><br />　<br />　<br />　<br /><br />　LEONARDO -- Dark Horse<br />　009<br />　<br />　<br />　<br /><br /><br /><br />　意識が戻ってから三日が経った。<br />　もちろん足が簡単に動くわけもなく、レオナルドはずっと部屋のベッドに座っているか寝ているかしかできていない。食事は三回、エミリーが持ってきてくれるので放置されて死ぬことはないようだった。<br />　手当ては彼女は慣れた様子でこちらの足のギブスを変えてくる。その間ずっと無表情でなにもしゃべらないので、レオナルドは彼女が辛い過去でもあるのではないかと思った程だ。<br />　ある日、耐えられなくなったレオナルドは夕食を持ってきた彼女に尋ねてみた。<br />「なあ、ここの主は誰なんだ？」<br />「ぬし？」<br />　意味がわからない、というよりはこちらの言っていることを半ば馬鹿にするような感じで聞き返してくる。はじめて彼女の表情らしい表情を見た気がした。<br />「ドクだけど」<br />「ドクね。そのひと......どこにいるんだ？」<br />「工房にいるよ」<br />「話って、できないのか？」<br />「それは、あたしじゃ駄目なこと？」<br />　そこで言葉が途切れる。確かに彼女でなければ駄目ということではない。単純にレオナルドは着替えさせられているので自分の持ち物や機体の現状を確認したかった。その問いを彼女にぶつけるのもどうかと思うから尋ねているのだが。<br />「その......」<br />　レオナルドは一旦言葉を切った。彼女はじっとこちらを見つめている。その視線を見返すのはなぜか幾許かの度胸と気合を必要とした。<br />　軽く肩をすくめて見せて大したことない風を伝えながら続ける。<br />「難しい話だからさ」<br />「へえ」<br />　再び彼女の眉がひそめられる。その所為で無表情だった顔に再び表情らしいものが浮かんでくる。<br />　軽蔑。<br />「ようするにこんながきんちょに俺のいうことがわかるのかと、そういいたいのね？」<br />「いや、あの」<br />「いいわ。ドクに伝えてあげる。で、何が聞きたいの？」<br />　呆然とする。<br />　空気を読んでなかった。<br />　エミリーに対して申し訳ない気持ちになりながらレオナルドは思っていたことを切り出した。<br />「俺の荷物と、着ていた服、どこにあるんだ？　あと機体。いろいろ大切なものがしまってあるんだけど」<br />「工房にあるよ。荷物はよくわからないから、あなたのボスの名前を調べさせてもらって、それから機体のコクピットに放り込んである」<br />「出歩いちゃ駄目なのか？」<br />「いいと思うけど。多分ドク嫌がるよ。研究室とか入られたくないだろうし。外は治安悪いし。誰かに襲われたって叩けないでしょ。君、全然強そうにみえないし」<br />「......」<br />「なぁんだ、どんな難しいこと聞かれるのかと思ったら、あたしでも答えられるじゃん」<br />　最後の言葉に半ば傷つきながらレオナルドは足を見やった。とりあえず強いか強くないかよりあるけるかどうかのほうが重要かもしれない。<br />「これ、六週間もかかるのか？」<br />「さあ。目測だから。病は気からともいうから、もっと早いかも。ただ歩けるようになっても飛べるようになるのはもっとかかるかもしれないよ」<br />「ドク！」<br />「もー。わかった。伝えとくけどあのひと出不精だから。でてこないかもよ」<br />「わかったからせめて松葉杖かしてくれ。トイレぐらい君の手を借りなくても行きたい。あとシャワーあびたい」<br />　切実なレオナルドの言葉にエミリーがあからさまに嫌そうに顔をしかめて見せる。<br />「足折れてるのに？　面倒なことになってもしらないよ」<br />「いいから。そういえばここに有る本って読んでいいの？」<br />「むずかしいけど」<br />　きょとんとした顔でエミリーはこちらを見てきた。<br />「わかるならいいよ」<br /><br />　ベッドの横には大きな本棚があった。おそらく全部で百冊はつんであるだろう。とはいえベッドに寝たきりのレオナルドが手を届くのは下から三段程度だ。<br />　エミリーが戻ってからそのなかの一つを手に取ってみる。タイトルからすると航空関係の書籍のようだ。<br />　整備について、戦闘機について、飛び方について。<br />　レオナルドはそれらに目を通し始めた。<br /><br /><br />　それからさらに三日、墜落から一週間が過ぎた日。<br />　レオナルドは床に足を下ろすと、壁に手をつきながら歩ける程度になっていることに気づいた。もっともエミリーが言うほど重傷ではないのだと思う。だいたい降りたときに足が折れているという感覚自体なかったのだから。<br />　大きく息を吸う。足を進めると痛みが強いのは左足で、右足も同じギブスに包まれているものそれほど痛みはない。重傷なのは左なのだろう。。<br />　窓際までいくと大きくカーテンを開けて窓を押し開いた。そこにあるのは浜辺。そしてベッドからは見えなかったが建物に隣接してある倉庫から続く長い道だった。それは眼前の通りに直結していて、脇に木製の塀がずっと並んでいる。<br />　広さも十分ある。滑走路として使えそうだな、などと思う。<br />　そのまま視線を下ろすと庭がひろがっていて、二つある倉庫とこのレオナルドがいる建物のまわりをぐるりと囲んでいた。それはかなりの広さの敷地で、それがおそらくドクの所有地なのだろうと予想をつける。<br />　上をみると青い空が広がっていた。大きく浮かぶ入道雲。あそこに飛び込んだらどうなるだろう。以前誤って入ったときは大きくバランスを崩してあやうく空中分解するところだった。<br />　雲があれば入ってはいけない。それは機体の設計技術が進歩した今であっても変わらない。<br />　ぼんやりとそんなことを考えていると、後ろから声をかけられる。<br />「歩くと悪化するぜ」<br />　振り返る。つなぎをきたブロンドの男が立っている。若そうだが無精髭をはやしているせいか年齢不詳に見えた。<br />「ドク？」<br />「ああ、それでいいよ。レオナルド君。サーシャから話は聞いてる」<br />　彼はそういうとこちらに向かって松葉杖をふたつ投げてきた。それは床に跳ねてこちらに転がってくる。<br />「せめて歩くときはそれつかえ。そうすれば治りはちっとは早くなる」<br />　しゃがんでそれをうけとる。<br />「大佐と知り合い？」<br />「あいつとはパイロット時代から知ってるよ。電話で話した感じだと今もかわってないな。基地じゃうまくやってるのか？」<br />「ぼちぼち」<br />「ぼちぼちか。そんなもんか」<br />　そういうと彼は椅子をもってレオナルドの前にやってくると、こちらの腕をとってそこに座らせてくる。<br />　半ば強引にそこに座らされる。そしてこちらの右足をつかんでくると、彼はぐい、と関節どおりにまげてきた。<br />「痛いか？」<br />「いや」<br />「こっちはある程度平気か」<br />　そういうとその手が横にそれてこちらの左足に伸びてくる。その指先が触れた瞬間、レオナルドは足から背中を一気に駆け上がってきた激痛に顔を歪めた。眼前でその表情をみていたドクが小さく声をだす。<br />「ああ、こっちは駄目か」<br />　しばらく声にならずに息をつまらせていたが、しばらくしてからレオナルドは力を戻すと彼にむかって言った。<br />「痛い！」<br />「ああ。痛いところさわったからな」<br />　当然だとでもいうように彼は言ってくる。息をはくと松葉杖をよこしてきた。<br />「右はギブスいらないかもな。左は重傷かな」<br />「どのくらいで治りそう？」<br />「んー。一ヶ月半くらいか」<br />　思わず黙り込む。<br />「あんた何者なんだ？」<br />「ドクだよ」<br />　その答えにレオナルドは目を細めた。半眼で彼を睨みつける。<br />「最近の医者は戦闘機の面倒もみるものなのか？」<br />「俺は医師免許も整備士の免許ももってんだよ」<br />「なんで整備士に？」<br />「そこまで答える義務は俺にはねえ。俺もう軍人じゃねーし」<br />「もう？」<br />「ああ、いちいちうるさいやつだなあ」<br />　そういうとドクはレオナルドの右足のギブスを外してきた。そんな手で外れるものだったのかというのも驚きだが、それを外していいのかも疑問である。それはナイフをいれるとか、そういう動きではなく本当に手をあててどこかをいじればすぐ外れるといった、その程度のものだった。ある意味レオナルドにとっては驚きだった。<br />　上目でこちらを睨みつけながら彼は言ってくる。<br />「面倒みてやるっつってんだから黙ってみられてりゃいいんだよ。それともパーなのかテメーは」<br />　その台詞自体は半ばキレ気味だが、口調が静かなので聞いている方は余計に威圧的に感じた。とにかく怒らせてしまうと厄介そうな相手なので黙り込むことに決める。<br />「それじゃ、そういうことだから一ヶ月半ここで療養すること」<br />「それ、大佐が言ったの？」<br />　思わず尋ねてしまう。<br />「了解はもらってる」<br />　威圧的になにかいわれるかと思いきや軽くにやっと笑ってみせてくる。<br />「出歩いてもいいが、敷地から外に出るなよ。そのギブス、出たら音がなるようになってるから。一応」<br />　音が鳴ってどうなるのだろうか、と思ったが聞かないでおく。小さな機械でも埋め込んであるのだろうと手をのばすが触ると激痛なのでやめておいた。<br />　ドクの背中が扉の奥に消えていったのをみてから、レオナルドは息をついた。<br />　これからどうなるかが全く想像できない。<br />　<br /><br /> ]]>
        
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