窓から入り込む陽光が顔をさす。
ごぽり、と音がして、ティックはその液体の中で静かに、うっすらと目を開けた。
この角度で光が入り込むということは、今の時刻はAM10:00ほどか。
「ほぼ正常値、かな。問題なくてよかったわ」
若い女の声。
「今回は筋肉の再生が意外と早かったな。まあ、合格か」
こちらは少し年配の男性の声だ。
「衰退が意外と進んでいたのがびっくりだけど。とりあえず補給は定期的にやんなきゃってことだね。ある耐久実験みたいなものか」
「違うだろ。こいつの性格は把握してるんだろう?」
「うん」
「命を預かっているということを忘れるな」
「わかってるって」
そういうと、彼女は手元のタイマーを見やった。
「後数分かな」
「そうだな。今回は損傷が少ないから皮膚のみになるな。感覚系まで及んでなくてよかった」
「そうだね」
こちらが既に覚醒していることに気づかないのだろうか。
女の名前はアルフィ・シュルート。ティックの作り主だ。かなり才能にあふれた人間だ。プログラマー、科学者、マッドサイエンティスト、本人は自分をドクターと呼んでほしいようだったが、仲間たちに彼女をドクと呼ぶ者はいない。元国立研究施設の研究員だ。
アルフィは背が低いが、それほど若い女というわけではない。二十代後半だったかと思う。ウェーブのかかった黒髪を揺らしながらティックがはいった機材から離れると、彼女は自分のコンピュータに触った。
「市議会からパーティのお誘いがきてるんだけどさ。いきたくないんだよねー」
アルフィがメールの一つを開いてため息をついた。ゆったりとした自分の椅子に座り込み、だらりとだらしなく座り込んだ。
後ろに立っていた年配の男性がうっそりと返事をする。
「いったらいいじゃないか」
彼はロドリゴ・シュルート。アルフィの父親だ。白髪なのか銀髪なのかわからない頭髪と壮年とも中年ともいえる微妙な顔立ちのせいでいくつかわからないような男だった。彼はそのまま部屋を横切り、自分の机に向かう。
「私はいかないがね」
「また?」
「国家権力に情報はわたさないさ」
アルフィのあきれたような返事を気にも留めず、そういうとロドリゴは手元のワークステーションの前に座り込んだ。キーボードのキィを指ではじいていろいろ思考しているようにも見える。
と。
アルフィの隣にあったタイマーが鳴った。それが「0」をさしているのを確認し、腕をのばしてベルを止めると、彼女の視線がガラス容器の中のティックに向けられる。
「時間ね」
「わかった。おろすぞ」
ロドリゴがキーボードをたたくと同時に、ディスプレイに黒と白の文字列が並ぶ。続いてアルフィがティックが入っている巨大なガラスの機材のスイッチをおろした。
機械のギアが入れ替わるような巨大な音が響くと同時に、ティックの体に刺さっていた黒いコードが引き抜かれる。続いて中を満たしていた薄い青色の液体が排水されていく。
そのまま椅子に座ったティックが地面におろされると、隣にアルフィがやってきた。
「おはよう。気分はどう?」
「......眠い」
そういうと、ティックの腕を椅子に縛り付けていた皮の器具を外していく。ティックはぼんやりとアルフィの顔を見つめ、無表情で、
「......やつれた?」
「第一声がそれ?」
彼女はそういうとこちらを縛り付けていた器具をすべて外した。腕をのばしてティックを抱き起こすと軽く嘆息した。
「毎日ルトリン飲まないといけないって何度言わせるの。人間だって三日ご飯抜いたら動けないのに。一週間ぐらい大丈夫だと思ってる?」
怒る、というよりは叱る、といった口調だった。
ティックは彼女から目線をそらし、部屋の南側の壁を殆ど支配しているガラス窓を見た。通りを挟んだ向かい側のビルでは大勢の人間たちがせわしなく動いているのが目に入る。
「気をつけるよ」
いわれたからしたとばかりに気の入っていない返事をすると、ティックはアルフィから離れ窓際にむかって歩いた。窓から見下ろした先には車と人が絶え間なく往来している。
後ろで彼女が嘆息するのが聞こえた。が、あえて聞こえないふりをする。これで二回目。
ティックは部屋の片隅においてあったコーヒーメーカーの中にコーヒーが入っているのをみると、近くにあったカップに中身を注ぎ、アルフィのほうをみた。
「で、なんで呼び出したの?」
こちらの問い彼女は答えず、後ろで自分の席のディスプレイを眺めているロドリゴに向き直った。
彼の方にすこし近づくと、
「パパ、ティックと二人で話したいんだけど、いいかな」
「ああ。いいよ」
こちらとアルフィを見比べた後、彼は軽くうなずいた。それから机の上のシガーケースとライターを掴むと席をたつ。部屋から追い出されたことを気にしている風でもなく、なにも言わずに部屋を出て行った。
その彼をみていると、もうなんどとこういったやりとりを繰り返したのだろう。
その後ろ姿を見送ってから、アルフィがこちらに向き直る。
「あの人もだいぶやつれてるんだから、疲れさせないでよね」
「休みなよ」
そう小さくつぶやくと頭を抱えた。彼女の年齢は若くはないが、この研究を進めている人間たちの間からすればまだ若いほうだ。研究職と六人の管理----もとい保護者役をやっているのだから疲れて当たり前だろう。
ティックは部屋にあった来客用のソファに座り込み、そこまで考えてからフィークの存在を思い出した。
「そういえばいないね。あのこがいたら楽になるんじゃない?」
「フィーク? 昨日ちょっと遠くに使いにだしてあるの。帰ってくるのは来週だよ」
「ふーん。で、何の用なのさ?」
足下に転がっていた自分の服を着込みながら訊ねた。
「悪いニュースだよ。まだ裏の情報だけどロッセル・ヘラルド社のリコ・バルクレッドが正式にバックノウザー法に批准するみたい」
「え」
ティックは飲みかけのコーヒーを吐き出しそうになった。
「彼ってミラーリングに成功してたんじゃなかったけ。たしか」
「そう。おかしいよね。オープンソースにしてるわけでもないのに、勝手に他人のをコピーして、進めちゃったんだから。それで作ったものは別な形の正式版だって言い張るの」
「まあ、動くようになっただけでもすごいんじゃないかなーとは思うけど......で、まあその科学者様がシュルート先生に何の用なの?」
「これを機会に一体、オリジナルの引き渡しを要求してきたの。正確には、期間限定の研究用の交換かな」
「げ」
口の中にコーヒーが入っていたら間違いなく吐き出していたことだろう。ティックは半眼で目の前のカップで波打つ黒い液体を見つめた。
震える手を押さえ、テーブルに静かにカップをもどした。
「私は嫌だよ」
「暇でもいかせはしないわ。何の理由があって共同開発しなきゃいけないの」
こちらを安心させるためか、笑ってみせてくる彼女だが、どこか徒労感が漂う笑みだった。すこし申し訳ない気持ちになりながらティックがうなずくと、
「あ、返事はそう返したの?」
「というのをオブラートに書いて送っておいたんだけど」
さらにアルフィはつづけてきた。
「なんかその後マフィア?に逆に脅されちゃったのよね。ロッセル・ヘラルド社の後ろに後ろ盾の組織があるところまではグトゥが突き止めてくれたんだけど、バルクレッド個人とのつながりが見えなくて」
「......」
沈黙で視線をそらし、足を自分のもとに引き寄せる。アルフィの口調は軽いが、話している内容はかなり深刻だ。
「それって、私たちの命に関わる?」
「まだわからないわ。バルクレッドが直接言ってきたわけではないし」
彼女はそういうと、自分の机の椅子に座り込んだ。机の上にあったチョコレートを掴むと割りもせずに口に運び、ばりばりと噛んだ。その話した内容を反芻しながら、ティックは天井を見た。
やがて口の中の物を飲み込むと、アルフィは視線をあさってにむけ小さくつぶやいた。
「まいったわ」
「だろうね。私はどうすればいい? 傍にいればいい?」
「それより家族を失うのが怖い。誰かが死ぬって考えたくないんだ」
彼女は一息にそういうと、大きく息をついた。着ている服が緩むくらいに。
立てそうにない彼女に静かに近寄った。彼女の頼りない肩に手をのせると、
「私ならしばらく暇だよ。なんかやれることがあったら」
こちらの手を握り返して、アルフィが力のない笑みを浮かべてみせてきた。
「グトゥがこっちにいるし、レックスも戻ってきてくれたから私とパパは大丈夫。ティックはジンのところにいってくれるかな」
「ジン?」
聞き慣れない名前がでてきて、一瞬ティックは面食らった。
「誰?」
「私の弟。私邸に一人でいるんだ。守ってやってくれないかな」
「アルフィ弟なんていたの? というより私邸って? そんなのあったんだ」
「公邸と私邸があるの。シュルート家はね。その辺りの説明はそのうちするわ。で、その私邸の方に弟が一人、住んでるんだ。ジン・シュルート。十三歳か、そこらだったと思う」
「へぇ」
アルフィは写真と地図をプリントアウトすると、ティックに渡してきた。その書類には私邸の風景と場所が載っていた。ハミングフィールド市郊外にある小山の中の高台にあるようだ。
さぞかし見晴らしはいいんだろうな、と思いながらティックは口を開いた。
「これって、一般に公開されているの?」
「ジンが学校いってれば公開されているけどシュルートなんて名字ほかにもいるからね。私の弟ってわかるとこういうことになるかもしれないと思ったから、君らにも誰にもいわなかったの」
「うん」
「裏組織がどんな調査しいてるかわからないからさ。もし、私と兄貴とパパが殺されても、彼がいれば。だから、守ってやって」
こういった心配ごとをなるべく減らしてやるのも仕事のうちだろう。
ティックは数秒間考えたあと、アルフィに向かって軽くうなずいていた。
「わかった。任せておいてよ」
楽しみにしている一方でどこか怖くもあった。
そんな不思議な気分が渦巻いていた。
ごぽり、と音がして、ティックはその液体の中で静かに、うっすらと目を開けた。
この角度で光が入り込むということは、今の時刻はAM10:00ほどか。
「ほぼ正常値、かな。問題なくてよかったわ」
若い女の声。
「今回は筋肉の再生が意外と早かったな。まあ、合格か」
こちらは少し年配の男性の声だ。
「衰退が意外と進んでいたのがびっくりだけど。とりあえず補給は定期的にやんなきゃってことだね。ある耐久実験みたいなものか」
「違うだろ。こいつの性格は把握してるんだろう?」
「うん」
「命を預かっているということを忘れるな」
「わかってるって」
そういうと、彼女は手元のタイマーを見やった。
「後数分かな」
「そうだな。今回は損傷が少ないから皮膚のみになるな。感覚系まで及んでなくてよかった」
「そうだね」
こちらが既に覚醒していることに気づかないのだろうか。
女の名前はアルフィ・シュルート。ティックの作り主だ。かなり才能にあふれた人間だ。プログラマー、科学者、マッドサイエンティスト、本人は自分をドクターと呼んでほしいようだったが、仲間たちに彼女をドクと呼ぶ者はいない。元国立研究施設の研究員だ。
アルフィは背が低いが、それほど若い女というわけではない。二十代後半だったかと思う。ウェーブのかかった黒髪を揺らしながらティックがはいった機材から離れると、彼女は自分のコンピュータに触った。
「市議会からパーティのお誘いがきてるんだけどさ。いきたくないんだよねー」
アルフィがメールの一つを開いてため息をついた。ゆったりとした自分の椅子に座り込み、だらりとだらしなく座り込んだ。
後ろに立っていた年配の男性がうっそりと返事をする。
「いったらいいじゃないか」
彼はロドリゴ・シュルート。アルフィの父親だ。白髪なのか銀髪なのかわからない頭髪と壮年とも中年ともいえる微妙な顔立ちのせいでいくつかわからないような男だった。彼はそのまま部屋を横切り、自分の机に向かう。
「私はいかないがね」
「また?」
「国家権力に情報はわたさないさ」
アルフィのあきれたような返事を気にも留めず、そういうとロドリゴは手元のワークステーションの前に座り込んだ。キーボードのキィを指ではじいていろいろ思考しているようにも見える。
と。
アルフィの隣にあったタイマーが鳴った。それが「0」をさしているのを確認し、腕をのばしてベルを止めると、彼女の視線がガラス容器の中のティックに向けられる。
「時間ね」
「わかった。おろすぞ」
ロドリゴがキーボードをたたくと同時に、ディスプレイに黒と白の文字列が並ぶ。続いてアルフィがティックが入っている巨大なガラスの機材のスイッチをおろした。
機械のギアが入れ替わるような巨大な音が響くと同時に、ティックの体に刺さっていた黒いコードが引き抜かれる。続いて中を満たしていた薄い青色の液体が排水されていく。
そのまま椅子に座ったティックが地面におろされると、隣にアルフィがやってきた。
「おはよう。気分はどう?」
「......眠い」
そういうと、ティックの腕を椅子に縛り付けていた皮の器具を外していく。ティックはぼんやりとアルフィの顔を見つめ、無表情で、
「......やつれた?」
「第一声がそれ?」
彼女はそういうとこちらを縛り付けていた器具をすべて外した。腕をのばしてティックを抱き起こすと軽く嘆息した。
「毎日ルトリン飲まないといけないって何度言わせるの。人間だって三日ご飯抜いたら動けないのに。一週間ぐらい大丈夫だと思ってる?」
怒る、というよりは叱る、といった口調だった。
ティックは彼女から目線をそらし、部屋の南側の壁を殆ど支配しているガラス窓を見た。通りを挟んだ向かい側のビルでは大勢の人間たちがせわしなく動いているのが目に入る。
「気をつけるよ」
いわれたからしたとばかりに気の入っていない返事をすると、ティックはアルフィから離れ窓際にむかって歩いた。窓から見下ろした先には車と人が絶え間なく往来している。
後ろで彼女が嘆息するのが聞こえた。が、あえて聞こえないふりをする。これで二回目。
ティックは部屋の片隅においてあったコーヒーメーカーの中にコーヒーが入っているのをみると、近くにあったカップに中身を注ぎ、アルフィのほうをみた。
「で、なんで呼び出したの?」
こちらの問い彼女は答えず、後ろで自分の席のディスプレイを眺めているロドリゴに向き直った。
彼の方にすこし近づくと、
「パパ、ティックと二人で話したいんだけど、いいかな」
「ああ。いいよ」
こちらとアルフィを見比べた後、彼は軽くうなずいた。それから机の上のシガーケースとライターを掴むと席をたつ。部屋から追い出されたことを気にしている風でもなく、なにも言わずに部屋を出て行った。
その彼をみていると、もうなんどとこういったやりとりを繰り返したのだろう。
その後ろ姿を見送ってから、アルフィがこちらに向き直る。
「あの人もだいぶやつれてるんだから、疲れさせないでよね」
「休みなよ」
そう小さくつぶやくと頭を抱えた。彼女の年齢は若くはないが、この研究を進めている人間たちの間からすればまだ若いほうだ。研究職と六人の管理----もとい保護者役をやっているのだから疲れて当たり前だろう。
ティックは部屋にあった来客用のソファに座り込み、そこまで考えてからフィークの存在を思い出した。
「そういえばいないね。あのこがいたら楽になるんじゃない?」
「フィーク? 昨日ちょっと遠くに使いにだしてあるの。帰ってくるのは来週だよ」
「ふーん。で、何の用なのさ?」
足下に転がっていた自分の服を着込みながら訊ねた。
「悪いニュースだよ。まだ裏の情報だけどロッセル・ヘラルド社のリコ・バルクレッドが正式にバックノウザー法に批准するみたい」
「え」
ティックは飲みかけのコーヒーを吐き出しそうになった。
「彼ってミラーリングに成功してたんじゃなかったけ。たしか」
「そう。おかしいよね。オープンソースにしてるわけでもないのに、勝手に他人のをコピーして、進めちゃったんだから。それで作ったものは別な形の正式版だって言い張るの」
「まあ、動くようになっただけでもすごいんじゃないかなーとは思うけど......で、まあその科学者様がシュルート先生に何の用なの?」
「これを機会に一体、オリジナルの引き渡しを要求してきたの。正確には、期間限定の研究用の交換かな」
「げ」
口の中にコーヒーが入っていたら間違いなく吐き出していたことだろう。ティックは半眼で目の前のカップで波打つ黒い液体を見つめた。
震える手を押さえ、テーブルに静かにカップをもどした。
「私は嫌だよ」
「暇でもいかせはしないわ。何の理由があって共同開発しなきゃいけないの」
こちらを安心させるためか、笑ってみせてくる彼女だが、どこか徒労感が漂う笑みだった。すこし申し訳ない気持ちになりながらティックがうなずくと、
「あ、返事はそう返したの?」
「というのをオブラートに書いて送っておいたんだけど」
さらにアルフィはつづけてきた。
「なんかその後マフィア?に逆に脅されちゃったのよね。ロッセル・ヘラルド社の後ろに後ろ盾の組織があるところまではグトゥが突き止めてくれたんだけど、バルクレッド個人とのつながりが見えなくて」
「......」
沈黙で視線をそらし、足を自分のもとに引き寄せる。アルフィの口調は軽いが、話している内容はかなり深刻だ。
「それって、私たちの命に関わる?」
「まだわからないわ。バルクレッドが直接言ってきたわけではないし」
彼女はそういうと、自分の机の椅子に座り込んだ。机の上にあったチョコレートを掴むと割りもせずに口に運び、ばりばりと噛んだ。その話した内容を反芻しながら、ティックは天井を見た。
やがて口の中の物を飲み込むと、アルフィは視線をあさってにむけ小さくつぶやいた。
「まいったわ」
「だろうね。私はどうすればいい? 傍にいればいい?」
「それより家族を失うのが怖い。誰かが死ぬって考えたくないんだ」
彼女は一息にそういうと、大きく息をついた。着ている服が緩むくらいに。
立てそうにない彼女に静かに近寄った。彼女の頼りない肩に手をのせると、
「私ならしばらく暇だよ。なんかやれることがあったら」
こちらの手を握り返して、アルフィが力のない笑みを浮かべてみせてきた。
「グトゥがこっちにいるし、レックスも戻ってきてくれたから私とパパは大丈夫。ティックはジンのところにいってくれるかな」
「ジン?」
聞き慣れない名前がでてきて、一瞬ティックは面食らった。
「誰?」
「私の弟。私邸に一人でいるんだ。守ってやってくれないかな」
「アルフィ弟なんていたの? というより私邸って? そんなのあったんだ」
「公邸と私邸があるの。シュルート家はね。その辺りの説明はそのうちするわ。で、その私邸の方に弟が一人、住んでるんだ。ジン・シュルート。十三歳か、そこらだったと思う」
「へぇ」
アルフィは写真と地図をプリントアウトすると、ティックに渡してきた。その書類には私邸の風景と場所が載っていた。ハミングフィールド市郊外にある小山の中の高台にあるようだ。
さぞかし見晴らしはいいんだろうな、と思いながらティックは口を開いた。
「これって、一般に公開されているの?」
「ジンが学校いってれば公開されているけどシュルートなんて名字ほかにもいるからね。私の弟ってわかるとこういうことになるかもしれないと思ったから、君らにも誰にもいわなかったの」
「うん」
「裏組織がどんな調査しいてるかわからないからさ。もし、私と兄貴とパパが殺されても、彼がいれば。だから、守ってやって」
こういった心配ごとをなるべく減らしてやるのも仕事のうちだろう。
ティックは数秒間考えたあと、アルフィに向かって軽くうなずいていた。
「わかった。任せておいてよ」
楽しみにしている一方でどこか怖くもあった。
そんな不思議な気分が渦巻いていた。


