人が死ぬことで儲かる場所といったら?
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「ホントに助かりましたよ。うちもかなり発行部数伸び悩んでまして、どうしようか悩んでいた所だったんです」
「いえいえ、気にすることはないですよ。世の中は面白い事件の宝庫ですからね。工夫をすれば発行部数を伸ばすことぐらい楽な仕事です」
「いやー、しかし、この案はある意味驚きました。殺人鬼をここまで扱えるのはすごいですねえ。ホント見習いたいですよ」
「まあ、そういうことをおっしゃる。ささ、お酒でもどうですか? 新しいのが入ったんですよ」
目の前のカウンターに座っている新聞記者にブランデーをすすめながら、テリーはにこにこ笑っていた。
記者が握っている手帳はいろんな言葉で埋め尽くされていたが、あちこちに【切り裂きジャック】という言葉が見え隠れする。
テリーはかなり高揚した気分で、酒を記者に注いだ。
「また困ったときは言ってきてください。いつでもお受けしましょう」
「はは、これから減っていかれなければよいのですけどね」
そんなことを話しながら。
と。
いきなり酒場の扉が開いた。
ばむ、と音がして人影を飲み込む。
「いらっしゃ・・・・・・・おお、ジースターじゃねえか!」
テリーは目を見開くと、手を振った。
「どうしたんだお前! 最近いなくなって。皆心配してたんだぞ!」
「・・・・・・・・そっか」
ジースターはなにやら薄汚れた顔をぽりぽりと掻いて、それから酒場に入ってきた。
黒いコートに身体を包んでいる。あちこちが血で汚れているので、テリ―はふざけ半分でこんなことを訊いてみた。
「お前なにやってたんだ? 喧嘩か?」
「ああ、まあちょっとそこで襲われたから」
ぼんやりと答えるジースターにテリーはにこりと笑って見せた。
「お前も無茶するなあ。リリーがらみか?」
「さあね」
そらっとボケる彼を無視して、テリーはカウンターの下に置いておいたものを取り出した。
「そうそう、こないだ新しいのが入ったんだが」
「酒か?」
ジースターが言ってくるのを無視して、笑顔で答える。
「いんや、新しい銃さ」
その言葉を聞いてジースターが顔をひきつらせる。
テリ―はにやりと笑みを浮かべると、その銃口を彼にむけた。
そしてカウンターの裏からそれを放った。
爆音。
ジースターの腹にそれはあたって爆発を起こし、そのまま後ろに吹き飛ばす。威力は思いのほか強く、ジースターは壁に叩きつけられた。
煙があがる。
ジースターが完全に沈黙したのを見てから、テリーがにやりと笑う。
「けっ、馬鹿が。くたばるんだな」
"切り裂きジャック"の操り役が表情を表した瞬間だった。
「感心しないね。テリーさん」
ドアの方に酒場にいた客の視線が集中する。
テリーは先ほど手にしていた銃をカウンターにおきながら、視線を送る。
それから目をみひらいた。
そいつはにやりと笑うと、テリーを含めた回りの連中を見やった。
「ようやくわかったよ。僕の手下も含めて、君らが全部やってたってわけだ」
「お前・・・・・・・クラレンス! なんでここに・・・・・・」
テリーとその記者が驚きの声をあげる。
「お、お前、なんだ! なんでここを知ってるんだ!」
「いや、ちーっとばかり今回は王宮側も黙っていられない事態になったんでね。この事件は迷宮入りになってもらおうかなと。ああ、発行部数にかんしては問題ないよ。理屈はつけない。ただ、ちょっと君らには黙っててもらうだけさ」
「・・・・・・・・・」
記者がなにか言った。
クラレンスは怪訝そうに眉をあげる。
「なんだって?」
「テリー! あいつを殺してくれ! 切り裂きジャックのせいにしてしまえば、どうだってなるだろ! 金だってはいる!」
「なにを恐れてるんだか」
クラレンスはため息をつくと、にやと笑って見せた。
「その当人のジャックさんはいずこへいかれたのかな?」
みると、壁が壊れているところで、ジースターの姿はなくなっている。
テリーと記者が表情をゆがめるのが見えた。
「そんな馬鹿な・・・・・・・」
「あいつは生きてるわけ。腹になにか仕込んでいたと見えるね。君らには所詮殺せるようなヤツじゃないんだよ。すくなくても普通の人間に【切り裂きジャック】を殺すことはできない」
クラレンスはそう言うと、眉をあげて見せた。
「僕がやってあげよう。その代わり、君らにはちょっと黙っててもらおうかな・・・・・全員か」
その科白と同時に、酒場にいた男達全員がクラレンス目掛けて踊りかかった。
銃声と罵声、そして殴り合う音が酒場をぬけて通りに響き渡る。
案外、ことは早く済んだ。
血まみれで倒れている男達を眺めながら、クラレンスはふうっと息をついた。
「だから言わんことではないのだよ」
そして奥で呆然としている二人をみる。
記者とテリー。
「君らかね・・・・・悪いけど、この酒場には消えてもらうよ」
クラレンスはそこに近づいていくと、彼らにも処置を施した。
絶叫があがった。